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原爆テーマ 多彩な楽曲 伴谷晃二創作40周年のアルバム 「ヒロシマ」今後も主軸

 エリザベト音楽大名誉教授で作曲家の伴谷晃二(68)=廿日市市=が、創作活動40年の節目に近作を集めたアルバムをリリースした。60歳を過ぎて初めて取り組むようになった原爆をテーマにした曲を中心に多彩な作品が並ぶ。(余村泰樹)

 昨年リリースしたアルバムには、1998年から2014年に創作した合唱や吹奏楽、室内楽、管弦楽など11曲を収める。新譜の中心に位置づけるのが「ヒロシマの詩(うた)」シリーズ。10年から作曲を始めた、原爆の犠牲者にささげる曲だ。

 天満川沿いで建物疎開中だった長兄を原爆投下の翌日に亡くし、父も幼くして失った伴谷。ケロイドが残る住民も身近にいる環境で育った被爆2世だけに「心の整理ができず、ヒロシマの曲は書けなかった」と打ち明ける。還暦を迎え「完全に整理できなくても」と向き合う覚悟を決めた。

 「ヒロシマの詩」の作曲時には、古里を流れる太田川などの川に思いをはせるという。「川は、被爆時の惨状も、その後の広島も見守り続けてきた。蛇行しながら流れる姿は人間の生き方にも重なって見える」。祈りの気持ちをマリンバやピアノ、クラリネット、尺八などの音色に乗せる。

 パリのエコール・ノルマル音楽院に留学した1974年から創作活動をスタート。20世紀を代表する作曲家メシアンに師事した。「作品への姿勢が真摯(しんし)。生徒一人一人を大切に、豊かな関わり方をしていた」と振り返る。

 そんな師の姿は、今も道しるべだ。日本や韓国、中国などから音楽家が集う「東アジア音楽祭inヒロシマ」などのイベントを企画し、次世代を担う人たちの活躍の場を提供する。

 今後も「ヒロシマ」を主軸に創作を続けるという。「もっともっとヒロシマ、ナガサキについて学び、作品に反映させたい。人間の尊厳について考える音楽イベントも開いていければ」

(2016年2月13日朝刊掲載)

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