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新人戯曲賞に象千誠 瀬戸内舞台の「畳と巡礼」

 広島市南区の象千誠(ぞう・ちせい)さん(32)が、若手の登竜門である日本劇作家協会の新人戯曲賞に輝いた。広島県在住の劇作家では初の快挙。「タイトルを持ち帰れるのはうれしい。広島の演劇界に還元できれば」と喜ぶ。

 「心に引っ掛かっていることを描いた」という受賞作「畳と巡礼」は、瀬戸内の水産会社が舞台。象さんの故郷の北海道函館市と瀬戸内の港町の今を重ねながら、日本が抱えるさまざまな問題を盛り込んだ。家族関係のねじれや外国人技能実習生の葛藤、終戦から70年を経た太平洋戦争の戦後処理問題…。「演劇らしい骨太な作品」と審査員に評価され、189の応募作の中から昨年12月に受賞が決まった。

 広島大で演劇を始め、かつては自らの劇団を主宰するなど、これまでも長短編の台本を執筆してきた。受賞作について「さまざまなものが混在し、混沌(こんとん)とした内容。見る人によって受け取り方が違うはず」と語る。

 「分からないことを分かりたい。演劇をするのはそんな自己救済のためでもある」。今もアルバイトをしながら、地方で演劇を続けることの可能性や意義を探る。「商業主義の東京と違い、地方だからこそ実現しうることがある。仕事をしながら、広島で豊かな表現活動に参加し、少しでもその役に立ちたい」と力を込める。(余村泰樹)

(2016年2月13日朝刊掲載)

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