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被爆証言 テープ起こし 西区の田辺さん CG映画に活用へ

 被爆前の広島市中心部の姿をコンピューターグラフィックス(CG)映像で再現する映画制作に取り組む田辺雅章さん(74)=西区=が、爆心地から500メートル以内に家や職場があり被爆した人たちの証言テープを書き起こした。「被爆前後の状況を最近のこととして語っていて貴重な情報」。今後は被爆前の市中心部を記憶する人や写真を所蔵する人の情報提供を募る。(金崎由美)

 映像制作会社社長の田辺さんは2011年5月、テープを保管していた鎌田七男広島大名誉教授から借り受けた。社会学者で広島大教授を務めた故湯崎稔さんが1950~60年代に聞き取った129人分で、被爆体験や戦時中の市内の様子を語っていた。映画制作に役立ちそうな部分を書き起こすとA4用紙300枚分になった。

 西練兵場があった広島城周辺で各地から召集され野営する兵士2千人が朝食を取る原爆投下直前の様子や、バケツリレーで住民が消火訓練する様子などの証言があった。被爆時は「黄と白が混ざった光。音は聞いてない」と話した人が多いという。

 生家が旧県産業奨励館(原爆ドーム)の東隣だった田辺さんは「西練兵場はトンボを捕り、サーカスを楽しむ場でもあった。軍事施設も市民生活と隣り合わせだった」と話す。

 田辺さんは97年、爆心地付近のCG制作に着手。10年夏、中島地区(現平和記念公園)の再現映画を完成させた。被爆70年の15年完成を目指す新作は、爆心地から半径1キロ圏に対象を広げる。

 東は福屋八丁堀本店、西は天満川、北は広島城、南は市役所付近までの範囲。田辺さんは「行政、経済など街の営みが凝縮されたエリア。原爆が奪ったものを再現するため情報を広く募りたい」と話す。ナック映像センターTel082(292)9401。

(2012年2月20日朝刊掲載)

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