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庄野直美氏が死去 物理学者 平和運動に尽力 86歳

 物理学者で被爆者という立場から平和運動と原爆被害の研究に尽力した広島女学院大名誉教授の庄野直美(しょうの・なおみ)氏が18日、肺炎のため広島市佐伯区の病院で死去したことが20日、分かった。86歳。広島県安芸太田町出身。自宅は廿日市市阿品4の30の15。葬儀は19日に近親者のみで済ませた。喪主は長男博貴(ひろたか)氏。

 九州帝国大(現九州大)理学部在学中、原爆投下から3日後の広島市に入り被爆した。広島大助教授、広島女学院大教授を歴任し、91年から同大名誉教授。専攻は理論物理学。

 全国から募った寄付を基に「ヒロシマ・ナガサキ平和基金」を85年設立。理事長を務め、05年まで平和活動に励む団体や個人を対象に助成を続けた。

 被爆直後の広島、長崎の惨状や原爆の威力、放射線の後障害などを紹介した「ヒロシマは昔話か」(84年)など著書多数。同作は最後を「ヒロシマは過去の出来事ではない」と結んだ。05年に広島市民賞を受賞した。(田中美千子)


核兵器廃絶へ信念貫く 庄野さん ゆかりの人 悼む声

 平和運動と原爆被害の研究に力を注いだ広島女学院大名誉教授の庄野直美さんの訃報が届いた20日、被爆地の研究者や平和運動家からは追悼の声が寄せられた。

 30年来の親交があった広島大の葉佐井博巳名誉教授(80)=佐伯区=は「ヒロシマを忘れてはならんとの信念を貫き、研究と核兵器廃絶運動の両面に尽力された。原爆を体験した科学者の責任と思われていたのではないか」と惜しんだ。

 広島女学院の黒瀬真一郎理事長(70)は「研究室にこもるのではなく、核兵器廃絶へ行動を忘れなかった」。広島平和文化センターの河合護郎元理事長(83)=安佐南区=は「科学的に核兵器の恐ろしさが語れる存在は頼もしく、反核運動家として多くの人から尊敬された」とたたえた。

 全国からの募金を基にした「ヒロシマ・ナガサキ平和基金」の設立に、庄野さんとともに関わった県朝鮮人被爆者協議会の李実根(リシルグン)会長(83)は「最初はとても無理だと思ったが、こつこつと募金を積み上げ実現させたリーダーシップは本当にすごい」としのんだ。(金崎由美、田中美千子)

(2012年2月21日朝刊掲載)

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