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川の街 シンボルに 猿猴橋復元 住民ら祝典 渡り初め 広島市南区

 90年前の姿に復元された広島市南区の猿猴橋。28日にあった完成を祝う祭りは、復元を発案した地元住民が盛り上げた。JR広島駅前の再開発で街の姿が変わる中、川の街・広島の古くて新しいシンボルの完成に、祝賀ムードが広がった。(石川昌義)

 猿猴川に架かる猿猴橋は長さ62メートル、幅9メートル。4本の親柱に、橋のシンボルである青銅製のタカの像が存在感を放つ。住民グループ「猿猴橋復元の会」の働き掛けに応えた市がリニューアルした。

 「橋が生き生きしている。タカが見事によみがえって、橋に命を吹き込んだ」。復元の会の大橋啓一会長(69)は湯崎英彦知事や松井一実市長と渡り初めし、高さ5メートルを超す親柱を見上げた。地元主催のイベント「えんこうさん」には大勢の市民が詰め掛け、除幕されたタカの像にカメラを向けた。

 1926年に完成した橋の歴史は、戦争の影と復興の力強さを刻む。デルタの風景に溶け込んでいた大正期の像や照明灯、欄干の透かし彫りは、戦時中の金属供出で国に取り上げられた。被爆直後も落ちなかったため、傷ついた被爆者が橋を渡って避難した。

 橋のたもとの南区的場町に住む花輪敬三さん(82)も渡り初めに参加。「子ども時代の思い出が詰まった橋。感無量です」と声を詰まらせた。親柱の背後には、8月に完成予定の52階建て再開発ビルの工事が進む。橋の意匠の復元を監修した市立大芸術学部の吉田幸弘教授(55)は「新しく変わり続ける街で、往時のにぎわいを伝えるタイムマシンのような橋になった」と喜んだ。

(2016年3月29日朝刊掲載)

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