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広島発 検索サイト 原爆手記70年間で5895冊 研究者ら26日開設

 広島・長崎の被爆70年間に刊行された「原爆手記」は5895冊に上ることが分かった。元広島女学院大教授の宇吹暁さん(69)らが、私家版や団体の機関誌など公共図書館が所蔵していない掲載書誌も調べた。書誌データを検索できるサイト「ヒロシマ通信」を26日に開設する。総数は5万編を超す原爆手記の分析を進め、被爆の実態を知り学ぶための専用サイトとして充実を図っていく。(特別編集委員・西本雅実)

 宇吹さんを代表に広島在住の司書らでつくる「紙碑」・原爆手記総目録編纂(へんさん)委員会が、1973年に設けられた原爆資料館情報資料室や、2002年開館の国立広島原爆死没者追悼平和祈念館が集めている書籍、発掘された占領期(45~52年)の刊行物、原水爆禁止・反核運動の中で被爆証言を記した掲載誌なども洗い直した。

 「あの日」の惨状や亡き肉親や友人への思い、強いられた苦難や偏見、平和への願い…。原爆手記の刊行は、被爆の翌46年に始まり書き続けられている。

 長崎で被爆した第七高(現鹿児島大)の学生らが46年2月に刊行した「不知火・追悼号」や、広島一中(現国泰寺高)3年生らが同8月に出した「泉 みたまの前に捧ぐる」から1年ごとに整理し、書名・編著者・発行所に加え、広島での所蔵先も盛り込んだデータベースをつくった。

 刊行を年代別に見ると、「原爆の風化」がいわれ始めた被爆30年の75年に107冊と3桁を数え、欧州発の反核運動が広がった中の85年は232冊、戦後半世紀でもある95年は最高の300冊をみたが、2000年代になるとほぼ減少傾向に。それでも被爆者の平均年齢が80・13歳となった15年、「泉第三集」など78冊が編まれ出版された。

 専用サイトの開設は、貴重な記録でありながら一般には知られることの少ない原爆手記の活用を図るのが狙い。被爆直後から続く学術調査や報告書など原爆文献の書誌情報も登載する。

 原爆手記の目録作りは、広島の言論人や在野の研究者らが呼び掛けて72年、314冊の書誌情報を収めた「原爆被災資料総目録第三集」を発行。宇吹さんは広島大放射能医学研究所助教授だった96年、長崎を含め3542冊・3万7793編を数えた「原爆手記掲載書・誌一覧」をまとめた。

実態知る第一歩に

宇吹暁さんの話
 原爆手記は被爆の実態を具体的に伝える貴重な記録だ。核を巡る国内外の事件や動きにも触発されて書き続けられてきた。手記の内容を掘り下げることで新たに見えてくるものがある。原爆を知る資料の第一歩としてサイトを利用してほしい。

(2016年4月24日朝刊掲載)

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