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玄祥の能 厳島に テロ・震災の犠牲者にささぐ 6月に舞台 「祈り」「土蜘蛛」披露

 重要無形文化財保持者(人間国宝)の能楽師、梅若玄祥が6月3日、厳島神社(廿日市市宮島町)の能舞台で初めて舞う。歴史ある舞台に立ち、世界で多発するテロや東日本大震災の犠牲者にささげる創作能舞「祈り」など2演目を披露。「広島から平和を発信したい」と意気込む。(余村泰樹)

 「四季折々の景色や風を感じながら、自然の中で舞うのが能本来の姿」と梅若。いずれも世界遺産のギリシャ・エピダウロスの劇場や京都の上賀茂神社など、近年は屋外での公演を重ねる。厳島神社の能舞台は、30年近く前に出演の打診を受けたが、都合が付かずかなわなかった。「訪れるたび、ここでやりたい気持ちが強くなった。実現して本当に幸せ」と喜ぶ。

 「祈り」は、2001年の米中枢同時テロの翌年、ニューヨークのグラウンド・ゼロ近くの劇場で、鎮魂と再生を願ってささげた演目。そのときは日本の僧の称名と能の音楽が響く中、即興で舞った。今回は、音楽大で声楽を学んだ5人組の男性ボーカルグループ「LE VELVETS」の歌声に合わせ、白衣をまとった尼僧姿で湧き上がるイメージを形にする。もうひとつは人気演目の「土蜘蛛(つちぐも)」を披露する。

 能は約3千演目の台本が残るが、現在も舞われているのは250演目にすぎないという。梅若は古典だけでなく、廃れた能の復曲や新作能の創作にも力を入れてきた。「長い時間をかけて磨ききった演目は素晴らしい。一方で、自分たちが今の感覚で作り、磨いていく作業で分かることも多い」。3歳で初舞台を踏み、たゆまぬ精進を重ねてきた第一人者が、新旧交えた演目でその魅力を伝える。

 午後7時開演。SS席1万3千円、S席1万円、A席8千円。実行委員会と中国新聞社の主催。ダンスウエストTel06(6447)1950。

(2016年4月23日朝刊掲載)

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