×

ニュース

「海軍の街」物語磨く 日本遺産に呉市認定 鍵握る大和ミュージアム

 旧海軍鎮守府が置かれた4市共同で日本遺産に認定された呉市。4月の中核市移行に続き、知名度アップに期待がかかる。旧海軍工廠(こうしょう)の技術力を受け継ぎ、戦後復興を支えてきた製造業に陰りがみえる中、「海軍の街」としてのストーリーを磨き、観光振興に弾みをつける。(広重久美子)

 大和ミュージアム(宝町)には2015年度、100万6336人が来館した。開館10周年や戦後70年の効果とみられる。市を訪れた観光客は年間ほぼ300万人。3分の1はミュージアムを訪れている計算だ。市観光振興課の河部泰志課長は「来館者の滞在時間を延ばし、飲食や宿泊につなげたい」と強調する。

 海軍の街としての「ストーリー」を紡いだことが、認定につながった。これを構成する文化財は旧呉鎮守府司令長官官舎(幸町)など17件。日本近代化の舞台は市内に散らばる。ミュージアムと他の文化財をつなぎ、ミュージアムの集客力の波及効果を引き出す仕掛けが欠かせない。

 文化財の中には、民間企業や海上自衛隊の施設もある。呉商工会議所の神津善三朗会頭は「行政と産業、経済界が連携し、盛り上げたい」と意気込む。

 「4市を巡る企画をすれば互いの活性化につながる」。そう提案するのは呉観光協会の奥原征一郎会長。4市共同のメリットを最大限生かす。市は、共通のガイド本や案内看板なども例に挙げる。

 20年の東京五輪に向け、世界遺産の原爆ドーム(広島市)や厳島神社(廿日市市)と近い地理的な条件も、魅力に取り込む工夫も求められる。

(2016年4月26日朝刊掲載)

年別アーカイブ