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被爆2市の記憶 初講話 長崎の「2世」で「伝承者」沖西さん

 長崎の被爆2世で、広島市の被爆体験伝承者に今春加わったビオラ奏者沖西慶子さん(50)=安佐北区=が27日、中区の原爆資料館で初講話に臨んだ。家族の情愛をテーマにした曲のビオラ演奏もあり、約30人が聞き入った。

 被爆体験のない人が被爆者に代わって伝える市のプログラムに参加した沖西さんは、爆心地から1・3キロの広島逓信局(現中区東白島町)で勤務中に被爆した細川浩史さん(88)=中区=の体験を語った。細川さんは柱の陰にいて助かったが、県立第一高等女学校(現皆実高)の1年生だった妹瑤子さん=当時(13)=は爆心地から約700メートル離れた小網町(現中区)付近で建物疎開の作業中に亡くなった。

 細川さんの逸話に加え、長崎で被爆した沖西さんの母素子さん(81)の体験も語った。素子さんの自宅で同居していた当時17歳のいとこは、爆心地から約1・2キロ離れた軍需工場へ学徒動員中に被爆死した。細川さんと母親から聞いた話を基に「助けてやれなかった」と後悔し続ける心情を伝えた。

 講話を終え、ビオラで演奏した曲の題名は「娘愛(いと)し」。音楽教師だった細川さんの父親が、従軍中の中国で瑤子さんのために作った明るい曲だ。戦後を生きた父が、亡くなった娘をしのんで変えた暗い曲調も披露した。

 講話を聞いた細川さんは「心を込め、自分のこととして語ってくれた」と感謝した。沖西さんは「多くの人に事実を伝えられるよう、自分なりの表現を考え続けていきたい」と決意を込めた。(新谷枝里子)

(2016年4月28日朝刊掲載)

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