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被爆体験 同世代通じて実感 平和教材にゲン登場

 広島市教委は、独自の平和教育で使う小学3年用のテキストに、被爆後の広島でたくましく生きる少年の姿を描いた漫画「はだしのゲン」の採用を決めた。被爆体験の継承が課題となる中、同世代のゲンを通して被爆者の思いを感じてもらう狙い。2012年度、モデル校の市立小4校でテキストを使った授業をし、13年度の全校実施を目指す。

 はだしのゲンは中沢啓治さん(73)=中区=の自伝的作品。テキストには、貧しいながら家族で支え合って生きる被爆前の姿や、家族が原爆で倒壊した家の下敷きになる場面などを抜粋。ゲンの心情を読み取り、書き込む欄を設ける。

 市教委は13年度、平和について体系的に学ぶ「平和教育プログラム」を市立小中高校の全校で始める方針でいる。12年度は小中高計10校で試行する。

 テキストは小学生から高校生まで4段階に分けて作る。高校では中沢さんの半生や作品に込めた思いを取り上げる。このほか、戦後復興の中で市民が広島カープ創生期の資金難を救った「たる募金」(小学5年)▽世界の核兵器の現状と廃絶への動き(中学3年)―などを題材にする。

 市教委の10年の調査では、広島に原爆が投下された年月日と時刻を「1945年8月6日午前8時15分」と解答できた小学4~6年は33・0%、中学1~3年は55・7%。正答率はいずれも過去最低だった。

 中沢さんは「広島の子どもたちには原爆についてしっかり考えてほしい。そのために、はだしのゲンを教材に使ってもらえるのは作者冥利(みょうり)に尽きる」と喜んでいる。(田中美千子)

(2012年3月21日朝刊掲載)

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