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「黒い雨」 「エリア確定困難」了承 5月にも最終報告

 広島原爆投下後に降った「黒い雨」被害の援護対象である国の指定地域見直しで、厚生労働省の第7回有識者検討会が29日、省内であった。「降雨域の確定は困難」「黒い雨体験者は精神面の健康状態が悪い」とするワーキンググループ(WG)の分析に沿った報告書を、5月にも開く最終会合でまとめる方針を確認した。

 広島市の「原爆体験者等健康意識調査報告」のデータを再解析したWG結果は前回提示。指定地域の約6倍の雨域を推定した市の報告を追認しなかったが、指定地域の外に「黒い雨体験率」50%以上かつ回答者10人以上の地域が9カ所あった点を指摘していた。

 この日は、参考人の糸山隆・市健康福祉局長が意見表明。指定地域外で黒い雨を体験した人は非体験者より心身の健康状態が悪い▽指定地域外の広範囲で雨が降ったのは明確―などとして、地域を広げて被害者を早く救済するよう訴えた。

 まとめ議論では「体験者の不安を無視できない」などと精神面での影響のみをとらえた意見が大勢を占め、1人は体験者向け保健施策を提案した。一方、被爆者同様の援護につながる地域拡大を求める意見はなかった。

 座長の佐々木康人・日本アイソトープ協会常務理事は、検討会が市の報告書の科学的な検証を目的にしている点を踏まえ「国への提言をするべきかどうかは委員間で調整する」と述べた。厚労省は検討会の報告を受け、拡大の是非を判断する。(岡田浩平)

(2012年3月30日朝刊掲載)

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