×

ニュース

オバマ米大統領 広島訪問 「核なき世界 追求する勇気を」 現職で初 慰霊碑前で訴え

 米国のオバマ大統領が27日、広島を訪問した。71年前の人類の惨禍の記憶を刻む被爆地に現職の米大統領が立つのは初めて。広島市中区の平和記念公園で原爆慰霊碑に献花。碑前で「核を保有する国々は、核兵器のない世界を追求する勇気を持たねばならない」と演説する。日本被団協代表委員で広島県被団協の坪井直理事長(91)たち被爆者が立ち会い、対面した。(岡田浩平)

 オバマ氏は午後5時20分すぎに公園に到着。原爆資料館で、被爆10年後に亡くなった佐々木禎子さんの折り鶴など複数の特設展示を見た後、原爆慰霊碑へ。日米両政府に招かれた広島市の松井一実市長や長崎市の田上富久市長ら約100人が通路前方で着席して見守る中、碑前に花輪を手向け、数秒目を閉じて犠牲者を追悼した。

 演説では冒頭、「71年前、雲一つない明るい朝、空から死が落ちてきて世界は変わった」と原爆投下を表現した。多数の市民や朝鮮半島出身者の犠牲に言及し「いつか証言する被爆者たちの声は聞けなくなるが、1945年8月6日の朝の記憶を風化させてはならない」と語った。原爆投下を巡る謝罪はなかった。

 同行した安倍晋三首相は演説で「核兵器なき世界」の実現に向け、「努力を積み重ねる」と強調した。

 オバマ氏はその後、坪井理事長に歩み寄り、握手を交わした。原爆の犠牲になった米兵捕虜の存在を調べてきた歴史研究家の被爆者、森重昭さん(79)=西区=とは抱き合った。

 オバマ氏は、原爆の子の像の前から原爆ドームを眺めた後、車列を組んで公園を離れた。公園の滞在時間は52分だった。

 オバマ氏は2009年1月に大統領就任。同年4月のプラハ演説で「核兵器なき世界」の追求を訴えた。被爆地訪問にも関心を示していた。27日まであった主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)のために来日。討議終了後、大統領専用機で米海兵隊岩国基地(岩国市)へ移動しヘリコプターに乗り換えて広島ヘリポート(西区)に降り立った。

(2016年5月28日朝刊掲載)

紙面イメージはこちら

年別アーカイブ