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抱擁 感無量の表情 被爆捕虜研究の森さん オバマ氏広島訪問

 「12人の死んだ米兵がきっと天国から見ていると思う」。被爆死した米兵捕虜を研究してきた広島市西区の被爆者、森重昭さん(79)は平和記念公園(中区)での訪問行事でオバマ氏と抱擁し、「米兵捕虜の犠牲にきちんと向き合おうという姿勢を感じた」と感無量の表情を見せた。

 森さんは最前列でオバマ氏の献花を見届け、原爆の犠牲者として「捕虜となっていた十数人の米国人」にも触れた演説を聞いた。終了後、記者団に「戦争に向き合ってきた人だからこそ言える言葉。核兵器廃絶を本気で目指している。自分が考えてきたことと同じだ」と語った。

 森さんは爆心地から約2・5キロで被爆。「もっと爆心地近くにいたら自分も死んでいたかもしれない。何があったのか明らかにしなければ」との思いで、会社勤めの傍ら、被爆史を研究してきた。被爆死した米兵捕虜が12人いたことや、その日までの足取りを突き止めた。

 森さんによると、数日前、米政府関係者から突然自宅に行事出席の打診があった。この日は、オバマ氏を前にして気持ちが高ぶり、何を話したかほとんど覚えていない。通訳に頼らず「あなたのスピーチを聞けてうれしかった」と英語で伝えたことだけは、はっきり覚えているという。

 「戦争をなくすことは大変難しい。ノーモア・ヒロシマ、ノーモア・ナガサキを絶えず伝え続けることが大事だ。その思いを新たにした」とすがすがしく語った。(久保友美恵)

(2016年5月28日朝刊掲載)

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