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平和へ期待込め花輪 両親が被爆 生花店店主・谷沢さん 「核なき世界へ」高まる機運

 オバマ米大統領が原爆慰霊碑(広島市中区)に手向けた花輪は、中区で生花店を営む谷沢隆夫さん(66)=写真=が作った。亡き両親は被爆者。歴史に残る場面を支えた裏方の一人となり「花には広島の平和への思いがこもっている。オバマさんに届いていれば」と願った。

 市から花輪の製作依頼を受けたのは訪問の約1週間前。「白系で」との要望に応え、江田島市産の白と淡い緑のカーネーションやトルコキキョウ、スプレー菊など計約150本を使い、直径80センチ、重さ約3キロの「大輪」を仕上げた。

 27日夕にオバマ氏が献花し平和記念公園を去った後、花輪を写真に収めようと市民らが長い列をつくった。花輪は業者が28日未明に撤去。30日、谷沢さんの手元に戻ってきたが、既にしおれた花もあり廃棄する意向という。

 谷沢さんの母春子さん(2008年に88歳で死去)は今の西区で被爆。父忠雄さん(06年に89歳で死去)は徴兵され、滞在していた下関市から原爆投下翌日に広島市内に入った。1946年、忠雄さんが現在のタカノ橋商店街に店を構え、谷沢さんが40年ほど前に継いだ。

 各国要人が慰霊碑に手向ける花輪を数多く手掛け、4月に市内であった外相会合でも使われた。谷沢さんは「落ち度なく完成させるという商売人としての心構えをおやじから引き継ぎ、今回も淡々と作った。平和な世界がこれからも続いてほしい」と話す。(長久豪佑、益田里穂)

(2016年5月31日朝刊掲載)

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