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父はスパイ 家族の苦しみ語る 広島市東区の深谷さん 崇徳高で講演

 戦中、戦後の中国で活動した旧日本軍スパイの次男として生まれ、家族の苦難をつづる本を出版した広島市東区の深谷敏雄さん(68)が23日、西区の崇徳高で講演した。

 昨年99歳で亡くなった深谷さんの父義治さん(大田市出身)は戦時中、上海でスパイ活動に従事。中国人女性と偽装結婚し、敗戦後も上官の命令で上海にとどまったという。1948年に生まれた深谷さんは上海で育った。

 父は58年、中国当局に逮捕された。深谷さんは著書「日本国最後の帰還兵 深谷義治とその家族」(集英社)で「野草をおかずにする生活」と貧困の日々を振り返る。日中平和友好条約の締結を機に父は78年に釈放され、一家は日本に帰国。だが、日本政府は父を中国への亡命者として扱い、家族への生活支援はなかった。

 帰国後、日本語を独学した深谷さんは「戦争が残したのは焼け野原と無数の墓、拭い去れない心の傷。家族の悲劇を語り継ぎたい」と力説した。講演は一ツ橋文芸教育振興会(東京)と中国新聞社が主催。生徒約460人が聴講した。(永山啓一)

(2016年6月24日朝刊掲載)

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