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「国は受け止めを」原告ら会見 抜本的改正訴え 東京地裁6人全員認定 原爆症訴訟

 国の判断を覆し、被爆者6人全員を原爆症と認めた東京地裁判決を受け、原告の被爆者や支援者たちは29日、東京と広島で相次ぎ記者会見した。「判決は認定の在り方を批判している」「国は重く受け止めるべきだ」。認定制度の抜本的な改正を口々に訴えた。

 東京地裁前では判決後、弁護団が「全面勝訴」「被爆者を苦しめるな」と書いた垂れ幕を掲げた。同様の訴訟では原告勝訴が相次いでおり、駆け付けた被爆者たち約100人も「また勝ったぞ」と歓声を上げた。

 原告のうち4人は国会内で記者会見に臨んだ。広島市で被爆し、甲状腺機能低下症を患う水野正治さん(78)=東京都目黒区=は「皆さんの支援に感謝する」と喜びをかみしめた。爆心地から2・2キロの現東区で被爆。国の2013年以降の基準では、同じ病気は約2キロまでの被爆しか「積極認定」の対象とされないとして、「一律の距離と病名で判断するのはおかしい。国は一人一人の状況や症状を考慮すべきだ」と訴えた。

 国の基準で対象外とされる慢性心不全で今回、原爆症と認められた山本英典団長(83)=杉並区=も「同じ病気で申請を諦めている人も多い。被爆者に残された時間は少なく、政府には原爆被害を正面から見る姿勢を求めたい」と強調した。

 同様の訴えを起こして広島地裁や広島高裁で係争中の被爆者や弁護士も、広島市中区で記者会見。弁護団事務局長の二国則昭弁護士は「画期的な判決。国はこの判決を受け入れ、今後の被爆者行政に生かすべきだ」と話した。

 甲状腺機能低下症を患いながらも認定から外れている原告の佐々木シズエさん(85)=廿日市市=は「いい判決が出て一歩前進」とし、「広島でも認められると期待している。勝つまでは死ねない」と力を込めた。(田中美千子、浜村満大)

(2016年6月30日朝刊掲載)

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