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被爆の夜 ここで命の絆 広島赤十字病院で再会

 原爆投下直後、広島赤十字病院(広島市中区、現広島赤十字・原爆病院)に避難した詩人の橋爪文さん(81)=東京都町田市=と、当時、同病院の看護師養成所2年生として、けが人を看病した上野照子さん(82)=西区=が17日、被爆後初めて二人で同病院を訪れた。同じソテツのそばで一夜を明かした二人は、67年前の「あの日」を振り返った。

 14歳だった橋爪さんは、広島貯金支局(中区)に学徒動員中に被爆、頭から大量出血した。けがに気付いた職場の女性が、近くの赤十字病院に連れて行ってくれた。「眠ると死ぬ」と医師に言われ、その女性がしばらく、橋爪さんの名前を呼び続けてくれたという。

 15歳だった上野さんは宿舎で被爆した。薬がないため、防火用水をくんで被爆者に飲ませるなど、昼夜を問わず看護に当たった。橋爪さんかどうかは分からないが、あの晩、「寝たら駄目です」と誰かに声を掛けた覚えがあるという。

 二人とも6日夜は、庭にあったソテツのそばで休んでいたという記憶で一致した。

 この日の対面は、橋爪さんの被爆証言の記録に取り組む中区の市民グループの仲介で実現。ソテツがあった場所などを見て回った。

 橋爪さんは「いろいろな人の助けがあって今がある」。上野さんは「足の踏み場もないほど被爆者であふれ、大勢が亡くなった。生きていてくれて、本当に良かった」と橋爪さんに寄り添った。(増田咲子)

(2012年4月23日朝刊掲載)

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