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社説・コラム

『大学力』 原爆ドーム 模型で再現 安田女子大家政学部造形デザイン学科

3D技術で創造力育む

 原爆ドーム(広島市中区)の姿を色合いまで忠実に再現した模型を5月に作った。安田女子大(安佐南区)家政学部造形デザイン学科の染岡慎一教授(57)=メディア論=が専用のスキャナーでドームを撮影し、学生4人がパソコン上で彩色。3Dプリンターを使って完成させた。染岡教授は「世界中で出力でき、教材として使ってもらえる」と力を込める。

 強烈な爆風と熱線にさらされた原爆ドームは、れんがの残り方や黒ずみ方は一様ではない。光の加減で見え方も違う。学生は何枚も写真を見比べ、話し合いを重ねながら微妙な色合いを再現した。被爆3世の3年梶岡萌仁花(もにか)さん(20)は「原爆ドームは見慣れているつもりだった。制作を通じて被害のすさまじさを実感した」と明かす。

 被爆70年の節目を迎えた昨年、模型を通じて原爆の悲惨さや平和の尊さを世界に伝えようと、3Dプリンターで白色の模型を作った。データは昨年7月、同大のホームページで公開。ロシアや米国など核保有国も含めた約80カ国・地域から計3千件以上のアクセスがあったという。

 「動画の撮影や配信は、かつてはプロの技術が必要だったが、今はアイデアや手間を惜しまない姿勢さえあれば学生でもスマホでできる」と染岡教授。3Dプリンターのような最新技術を教育に取り入れるのは「技術の進歩は、学生の創造力や発想の幅を広げる」との思いからだ。

 学生はJ1サンフレッチェ広島のホームゲームの際、エディオンスタジアム広島(安佐南区)で放映する映像の制作も手掛ける。得点シーンやサポーターの熱狂を撮影するため、2014年度から高精度な4Kカメラを導入した。「『学生の作るものだから』という甘えや妥協は許されず、社会人としての振る舞いも自然と身に付く」という。

 「学生の力と最新情報技術を使い、地域の財産を生かす方法を探りたい」。今後は、被爆建物が取り壊される前にデータを蓄積し、3Dプリンターを使って後世に伝えていく考えだ。(新谷枝里子)

(2016年7月24日朝刊掲載)

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