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宮島の「あの日」 証言映像に 広経大生

けが人看護 史実に迫る

 広島経済大メディアビジネス学科の学生が、被爆後に宮島(廿日市市)で亡くなった人たちをテーマに、ドキュメント映像「忘れられた魂 宮島の原爆死者たち」を制作した。観光客でにぎわう島に刻まれた惨劇を掘り起こしている。

 広島市編さんの広島原爆戦災誌には、宮島では七つの寺に似島(広島市南区)から運ばれた被災者が50人ずつ収容され、計335人が死亡したとの記載がある。宮島に被爆者が運ばれ、息絶えていった史実に驚いた3、4年生の6人が、1年前に制作を始めた。

 地元テレビ局元記者の徳永博充教授(67)の指導を受け、計11回現地を訪問。住民に取材を重ね、わずかな記録しか残っていない当時の惨状に迫った。

 22分の作品には、子どもの頃に被爆者の看護を手伝ったことなど、今も記憶が鮮明な住民のインタビューを収録。戦災誌に記載のない旅館でも被爆者が亡くなっていた事実を掘り起した。

 宮島での原爆死没者には身元不明者も多く、存在自体が忘れ去られようとしている現実にも直面。ディレクターを務めた4年の小林俊介さん(21)は「宮島は平和な観光地のイメージが強いが、あまり知られていない歴史に触れ、戦争や原爆について考えるきっかけになれば」と話す。(余村泰樹)

(2016年7月25日朝刊掲載)

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