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オバマ氏訪問 亡き兄に報告 被爆者 伊東さん 広島一中の慰霊祭

 オバマ米大統領の5月の広島訪問行事に招かれた広島市安芸区の被爆者、伊東次男さん(81)が24日、国泰寺高(中区)で営まれた前身の広島一中の原爆死没者慰霊祭に参列した。碑前で手を合わせ、1年の時に被爆死した兄宏さん=当時(12)=にオバマ氏の訪問を報告した。

 宏さんはあの日、爆心地から約800メートルの木造平屋の校舎にいて下敷きになった。今の安芸区の自宅に逃げ帰り、一時はきょうだいで遊べるほど回復したが、「兄が麦わら帽子を脱ぐと、中に抜けた頭髪がべたっと張り付いていた」(伊東さん)。ほどなく床に伏し9月1日に亡くなった。

 「追憶之碑」前での慰霊祭には約350人が出席。在校生代表の2年山田佳奈さん(16)がオバマ氏訪問に触れて「私たちも平和、核兵器廃絶を訴え続ける」と宣言。伊東さんは、自宅から携えた遺影を献花台に置いて花を手向けた。「オバマさんが来て、兄貴のような犠牲者はもう出さんと誓ってくれたよ」と心の中で語り掛けたという。

 伊東さんは2001年の米中枢同時テロで長男和重さん=同(35)=を亡くし、遺族としてオバマ氏の訪問行事に招かれた。この日の慰霊祭後、「全市民が原爆、戦争を二度と繰り返してはならないと心を一つにしてほしい」と語った。広島一中は、1年生を中心に生徒353人が原爆で犠牲になった。(水川恭輔)

(2016年7月25日朝刊掲載)

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