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連載・特集

日本遺産を巡る <2> ジャパンマリンユナイテッド呉事業所大屋根 呉市昭和町

大和建造 歴史息づく

 戦艦大和はここで生まれた。「大和のふるさと」。工場側壁の看板に、造船マンの誇りがこもる。

 ドックは1992年に埋め立てられた。残る大屋根は長さ101メートル、幅63メートル、高さ49メートル。船体に使う鉄板を製造する工場として再利用されている。

 ジャパンマリンユナイテッド(JMU)呉事業所の吉田淳管理部長(50)は大屋根を見上げてこう話す。「呉海軍工廠(こうしょう)から続く造船業の歴史の下で生きていると感じさせてくれる」

 大和は全長263メートル。当時世界最大級の戦艦の建造は最高機密だった。大屋根は、海岸線に迫る低山からドックを見下ろせないように架けられた。

 大屋根の長さは船体の半分に足りないが、視線を十分に遮ることができた。側面にはすだれを垂らしていた。この大屋根の下では、長門や赤城などの大型艦も建造された。

 大屋根と呉港が見下ろせる場所はいま「歴史の見える丘」として、家族連れやお年寄りが散策を楽しむ場として親しまれている。(今井裕希)

(2016年8月18日朝刊掲載)

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