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連載・特集

日本遺産を巡る <4> 旧呉鎮守府司令長官官舎 呉市幸町 「迎賓館」暮らしは質素

 「外国文化を取り入れた高い格式と質素な暮らしぶり。それを兼ね備えた旧海軍らしさがうかがえる」。呉市嘱託職員の津田文夫さん(61)は官舎の特徴をそう言い表した。官舎を含む入船山記念館の元主幹として維持管理に携わった。

 和洋折衷の木造平屋。洋風の客間の家具は英国でしつらえた。国内外の賓客や要人を迎え入れ、食事会が開かれた。さながら「呉の迎賓館」のようだ。

 対照的に和室部分は質素そのもの。歴代の司令長官が家族と質実剛健な暮らしを貫いたことが分かる。

 現在の官舎は「2代目」である。先代が地震で倒壊したため、1905年に建てられた。戦後は英連邦占領軍が内外壁を白く塗って使っていた。

 建設当時の姿を取り戻したのは95年。都内の防衛研修所(現研究所)で見つかった平面図などを参考に復元。客間の金唐紙の壁紙もペンキの下から発見され、作り直した。

 国重要文化財。呉市が一般公開を始め、来年で50年を迎える。(今井裕希)

(2016年8月20日朝刊掲載)

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