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疎開の荷物 71年ぶり「帰還」 広島・安佐北区の寺保管 廿日市の西村さんに

 第二次世界大戦中、広島市安佐北区白木町三田の西福寺に呉市から集団疎開した児童が、寺に残したままにしていたはがきや制服などの思い出の品が24日、71年ぶりに本人の手に戻った。寺が今年4月に物置で発見し、持ち主を探していたところ、中国新聞の記事をきっかけに情報が寄せられ、本人にたどりついた。

 持ち主は、当時9歳で呉市の岩方(いわかた)国民学校4年だった西村恒雄さん(80)=廿日市市阿品。1945年4月に疎開し、同7月1日に呉市に一時帰宅。その夜、呉が空襲に遭い、自宅は焼失した。西村さんは防空壕(ごう)で難を逃れ、家族も無事だったが、その後は生活再建に追われ、寺に戻ることはなく、荷物を残していたことも忘れていた。

 寺では今年4月、疎開児童の持ち物計26点が見つかり、持ち主を探していた。制服の名札には名前が書かれ、家族に宛てた投函(とうかん)前のはがきには「おねえちゃんがすきじゃったのに、そかいしたのであはれないやうになりました」などと寂しさをしたためていた。

 中国新聞が今月13日、情報提供を呼び掛ける記事を掲載。「西村さんのものでは」と情報が寺に寄せられ、持ち主が分かった。

 西村さんは24日に寺を訪れ、荷物を受け取り、当時を知る住民たち9人と語り合った。「思い出の品が戻ってきたのは、探してくれた地域の人のおかげ」と、涙ぐむ西村さん。「戦争は家族を引き裂き、子どもにつらい思いをさせる。二度と繰り返してはならん」と、はがきを見つめた。(中川雅晴)

(2016年8月25日朝刊掲載)

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