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核兵器の非人道性 講義や討論で学ぶ 広島で17ヵ国の政府職員ら

 赤十字国際委員会(ICRC、本部スイス)の公開講義「専門家と考える核と国際人道法」が、広島市中区の広島国際会議場であった。中国、ミャンマー、パキスタンなどアジア17カ国の政府職員や国際法研究者ら約70人を含む計100人が参加し、「核兵器の非人道性」への理解を深めた。

 被爆者の小倉桂子さん(79)が被爆体験を語ったのに続き、放射線影響研究所(南区)の丹羽太貫理事長が原爆放射線の健康被害について講義。さらに、英ガーディアン紙のジャスティン・マッカリー東京特派員と中国新聞ヒロシマ平和メディアセンターの金崎由美記者が、核被害を報じる意義や体験継承の課題について約1時間半、パネル討論した。

 2011年に起きた福島第1原発事故の現地取材を重ねるマッカリー記者は、原子炉の炉心溶融発生の公表が事故から2カ月も後だったことに触れ、「早くから専門家の指摘があったのに、日本の報道機関はもっぱら政府や東京電力の発表に依拠した。対立する情報を収集し、どう的確に発信するかが問われる」と批判した。

 金崎記者は、04年に成立した国民保護法によって各自治体が核テロ攻撃時などの避難計画の策定を求められたものの、広島市は「被害を避けるためには唯一、核兵器廃絶しかない」と結論付けたことを紹介。「核兵器が使われれば救助活動など無理。被爆地の教訓だ」と強調した。

 武力紛争時に適用される国際人道法に基づいて活動するICRCは、同法の知識を各国で深めてもらうため計6日間のセミナーを毎年マレーシアで開いている。今年は広島で初めて開催し、参加者が被爆の実態に触れる機会を設けた。

 ICRCは、公平で中立かつ独立した機関として、核兵器の使用について「国際人道法の原則との共存は難しい」との総裁声明を10年に発表。「核兵器の非人道性」を前面に出した近年の廃絶機運が盛り上がるきっかけにもなっている。

(2016年8月29日朝刊掲載)

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