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カナダの若者に被爆証言 英語版手記まとめた好村さん 学校巡り「惨劇二度と…」

 カナダ西部のブリティッシュコロンビア州スコーミッシュに住む広島の被爆者の好村ランメル幸(さち)さん(79)が被爆70年の昨年8月以降、証言活動を本格的に始めた。被爆体験やその後の半生をまとめた手記の英語版「Hiroshima Memoirs of a Survivor(日本語版タイトル『忘れないでヒロシマ』)」出版がきっかけ。「若者に原爆について知ってほしい」と、次はフランス語版出版も計画している。(増田咲子)

 1945年8月6日、好村さんは古田国民学校(現古田小、広島市西区)の3年生、8歳だった。爆心地から約4・2キロの同校の校庭で遊んでいた時に被爆。「ピカッ」と光ると同時に砂煙が舞い上がり、周囲が見えなくなった。帰宅中、黒い雨にも遭った。父は市中心部の職場で被爆。6日夜遅く自宅にたどり着いたものの、下痢や嘔吐(おうと)に苦しみ8月16日に亡くなった。

 母の実家がある萩市の萩高を卒業。広島で銀行勤めをした後、東京へ。被爆を理由に交際を断られたことも。65年、東京で出会ったカナダ人の男性と結婚、76年にカナダへ移り住んだ。

 2人の娘を授かり、孫2人にも恵まれた。長年、被爆体験を語ることはなかった。しかしカナダでは原爆の被害があまり知られていなかった。「子や孫、世界の将来を担う若者に伝え、核戦争や福島第1原発事故のような惨劇を起こしてほしくない」と2013年、日本語の手記を出版。昨年夏、それを英訳した。

 以来、小中高校や大学、コミュニティーセンターなどで40回程度、証言する機会を得た。「平和について真剣に考えなくてはいけない」「核兵器は正当化してはいけない」などの反応があったという。

 今後も証言の場を広げていく。手記も、知人の協力を得てフランス語やドイツ語での出版を計画。「世界の人々が共存していくには歩み寄りが大切だ。相手を尊重し、憎悪や差別をなくすなど日常生活の中で培われると思う。私の証言を聞いた人が一人でも多く平和のために行動してほしい」と願っている。

(2016年8月29日朝刊掲載)

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