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山口県の5度目説明要求 転機 県・中電やりとり文書 国の「上関」位置付け焦点

 中国電力が上関原発建設計画で海を埋め立てる免許の延長を巡り、県と中電が4年近くを費やしたやりとりの全容が12日、中国新聞の情報公開請求で判明した。これまでの請求で黒塗りだった計227枚の文書には、何が記されていたのか。当時の県のスタンスや政府のエネルギー政策も踏まえて検証した。(村田拓也、折口慎一郎)

 中電が免許延長を申請したのは2012年10月5日だった。08年10月に県から交付された免許に基づき、09年10月に海の埋め立て工事を始めたが、福島第1原発事故直後の11年3月15日に県と上関町の要請で中断。工事再開のめどが立たないまま、失効が12年10月7日に迫っていた。

 12年8月に退任した二井関成元知事は「埋め立ての前提となる土地利用計画が不透明。現時点で延長申請があっても認めることはできない」との立場を取った。後継の故山本繁太郎前知事も「許可できない。不許可処分をすることになる」と明言していた。

4ヵ月間で4回

 県が12年10月23日に中電へ求めた1度目の補足説明。「期間内に工事が完成できなかった理由は」「現在も、かつ今後も、原発用地としての土地需要があることが明確だと説明されたい」など、質問は計17項目に及んだ。

 中電は11月13日、A4判で計12枚の回答書を提出し、「上関原発は重要な電源で、埋め立ては必要」などと主張した。県が補足説明を求め、中電が回答するやりとりは4カ月間で4回繰り返された。県はそれぞれ12~18項目の回答を求めた。

 転機は県が13年3月19日に中電へ送った5度目の補足説明を求める文書。質問を3項目に絞り、回答期限を1年後とした。「国のエネルギー政策で、重要電源開発地点に指定された上関原発の位置付けが何ら変わることなく存続し、今後変わる見込みもないと挙証・説明されたい」との問いが初めて記された。

 国が「特に重要な電源」とお墨付きを与える重要電源開発地点の指定を中電が持ち出したのは4度目の回答。山本前知事は同年3月4日に不許可方針の撤回を表明し、国の政策における上関原発の位置付けを中電に証明させるには、時間的猶予が必要とした。

「引き続き有効」

 中電は14年4月の5度目の回答で、重要電源開発地点制度を巡り「見直しについて『現時点では想定していない』との国の見解を得た」と説明。県は納得せず同趣旨の質問を7度目まで続けた。山本前知事のスタンスを踏襲した村岡嗣政知事は「十分な説明が尽くされていない」とした。

 事態はことし6月22日の中電の7度目の回答で大きく動いた。中電は上関原発の指定を「引き続き有効で、解除は考えていない」とする国の見解を提示。村岡知事は「指定は、08年の免許の根拠だった。土地需要があるという要件を満たしており、法的には許可せざるを得ない」として8月3日、19年7月6日まで免許を延長した。

≪埋め立て免許を巡る主な経緯≫※肩書は当時

2008年10月22日 二井関成知事が中国電力に免許を交付

  11年 3月15日 福島第1原発事故を受けて埋め立て工事が中断

  12年 6月25日 二井知事が免許延長を認めない考えを表明

      7月29日 山本繁太郎知事が初当選。上関原発計画について二井             知事の方針を踏襲すると表明

     10月 5日 中電が免許延長を申請

     10月23日 県が中電に延長申請の最初の補足説明を要求。13年             1月30日まで計4回、繰り返す

  13年 3月 4日 山本知事が県議会代表質問で、可否判断を1年程度先             送りすると表明。不許可方針から転換

      3月19日 5度目の補足説明を中電に要求。回答期限を14年4             月11日に設定

  14年 2月25日 村岡嗣政知事が就任

      4月14日 5度目の補足説明の回答文書が中電から県に届く

      5月14日 村岡知事が6度目の補足説明を中電に要求し、可否判             断を先送り。回答期限を15年5月15日に設定

  15年 5月18日 6度目の補足説明の回答文書が中電から県に届く。中             電が2年8カ月の免許延長を県に申請

      6月22日 村岡知事が7度目の補足説明を中電に要求し、可否判             断を先送り。回答期限を16年6月22日に設定

  16年 6月22日 中電がさらに1年1カ月の免許延長を県に申請

      6月23日 7度目の補足説明の回答文書が中電から県に届く

      8月 3日 村岡知事が、中電が申請していた埋め立て免許の19             年7月6日までの延長を許可。また、発電所本体の着             工時期の見通しがつくまで埋め立て工事をしないよう             要請

      9月12日 県が、情報公開請求した中国新聞に対し、7度にわた             り中電に補足説明を求めた文書と中電の回答文書をほ             ぼ全面開示

(2016年9月13日朝刊掲載)

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