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高校生支援基金を設立 ノートルダム清心学園の渡辺理事長 奨学金給付や図書寄贈

 「置かれた場所で咲きなさい」などの著書で知られるノートルダム清心学園(岡山市北区)の渡辺和子理事長(89)が、県内の高校生への奨学金給付と高校向け図書の寄贈を目的に、二・二六事件で亡くなった父の名前を冠した「渡辺錠太郎記念教育基金」を設立した。著書の印税など1億円を充てた。

 奨学金は、毎年10人程度に月2万円を1年分支給。10月中旬に1回目の募集を始め、教育関係者や学園卒業生たちでつくる運営委員会が来年1月、対象者を選定する。書籍は、県内すべての高校を対象に、約10年かけて年間10校程度に各10万円分を寄贈する。基金は、三井住友信託銀行が運営する。

 錠太郎氏は家が貧しく小学校も満足に通えなかったが、独学で陸軍士官学校に入学し、陸軍大学校も首席で卒業。その後も生活費の大半を書籍代に費やして勉学に励むなど「陸軍の学者将軍」とも呼ばれた。軍隊教育機関の最高責任者である教育総監を務めたが、1936年の二・二六事件で凶弾に倒れた。

 ことしは事件から80年の節目。渡辺さんは「苦しい環境で学問を続けた父の教育への思いを基金に託し、優秀でありながら経済的に恵まれない子どもが有為な人材に育つ一助にしたい」と説明している。(加茂孝之)

(2016年9月22日朝刊掲載)

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