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ゲン、被爆者知る一歩 海外での流れ解説 広島市南区で豪出身准教授

英語版は当初苦戦 新訳きっかけに普及

 広島での被爆体験を描いた漫画「はだしのゲン」が海外でどう広まったかを解説する講座が22日、広島市南区の市まんが図書館であった。オーストラリア出身の県立広島大のロナルド・スチュワート准教授(52)=文化史=が「原爆を取り上げた本の中で一番インパクトがある」と魅力を語った。(河野揚)

 市民13人が聴講した。日本の漫画を約20年間研究してきたスチュワート准教授によると、「ゲン」の初の翻訳本は1978年に米国のボランティア団体が出した英語版で、「当時はあまり置いてくれる店がなかった」という。

 転機は2004年だった。「米国の出版社が全10巻の新訳版を出し、古典漫画や教材として受け入れられるようになった」と説明。現在、20カ国語以上に翻訳されており「日本を代表する漫画の一つ。米国人にとって被爆者の立場を知る入り口になる作品だ」と強調した。

 同じシーンの日本版と英語版を並べて示し、翻訳の難しさも指摘。「広島とヒロシマは、英訳では区別できない」「日本語独特の皮肉や方言は表現しにくい」などと語った。

 参加した南区の主婦大滝桂子さん(54)は「海外で普及するまでにいろいろな苦労があったと分かった。今後もっと広まってほしい」と願っていた。

(2016年10月23日朝刊掲載)

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