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中国地方飛行 ルート削除か オスプレイ

 垂直離着陸輸送機MV22オスプレイの配備に向け、米側が作成した環境審査報告書から、中国地方の飛行ルート「ブラウンルート」が、意図的に削除された可能性のあることが22日分かった。広島県の住民団体が英語版の中に見つけた。関係者は「実際には飛行する可能性が高く、墜落の危険や騒音が増す」と警戒している。(編集委員・山本浩司)

 環境審査は、海兵隊太平洋基地(旧在日米海兵隊司令部)が、普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)や米海兵隊岩国基地(岩国市)、キャンプ富士(静岡県御殿場市)、飛行訓練のため国内各地に設定されている「航法経路」などについて実施した。

 防衛省を通じて岩国市などに届いた日本語訳の報告書には、航法経路としてブルー(新潟―長野)、グリーン(青森―福島)、オレンジ(和歌山―愛媛)、ピンク(青森―新潟)、イエロー(九州北部)、パープル(沖縄本島北部―鹿児島・トカラ列島)の6ルートを挙げ、ブラウンルートだけがなかった。

 ブラウンルート削除の可能性を示すのは、沖縄防衛局のホームページで紹介されている英語版。

 日本語版にはない、航法経路での訓練回数を示した表の「注釈(2)」に「Brown(ブラウン)」と明記されている。さらに六つの航法経路のうち「Yellow(イエロー)」の後に不自然な「and」がある。

 これらを見つけた岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会の坂本千尋事務局長は「訓練回数の表は削除ミスだろう。削り残しと重ね合わせるとandの後にブラウンがあったのは間違いない」とみる。

 削除しようとした理由として、坂本事務局長は①ブラウンルート下には人口密集地が多く、審査で騒音などの影響が確認された②常に自治体や住民が監視しているブラウンルートは詳細な経路を公表したくない―などが考えられるとしている。

 軍事評論家の前田哲男さんは「意図的な削除かどうかは究明されなくてはならない。中国地方上空は岩国配備の航空機の訓練空域。オスプレイも飛行すると考えて間違いない」とする。

 坂本事務局長は「日本語版にブラウンルートの記載がなく、違和感があった。オスプレイが1機でも飛べば、表向きには環境審査なしの飛行になる」と指摘する。

ブラウンルート
 中国山地上空を東西に貫く米軍機の飛行コース。米軍機の低空飛行などが度々、目撃されている。日本政府も在日米軍も公式にはその存在を認めていない。

(2012年6月23日朝刊掲載)

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