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株主総会 島根1号機 中電、廃炉を否定

 中国電力の株主総会は27日、広島市中区の本社であり、原子力発電事業からの撤退などを求めて出された株主提案5件はすべて反対多数で否決された。苅田知英社長は「電気を安定供給するため、特定のエネルギー源に依存することなく、原子力を一定の比率で活用する必要がある」と強調した。

 総会には554人の株主が出席。一部の株主から、脱原発を求める意見が相次いだ。運転開始から38年を経過した島根原発1号機(松江市)について、松井三生副社長は「60年運転しても健全性に問題がない。現時点で廃炉の計画はない」と述べ、40年を超えても運転を続ける考えを示した。

 準備工事が中断している新設の上関原発(山口県上関町)についても「バランスのとれた電源構成には不可欠。安全確保を前提に今後も計画を進める」(小野雅樹常務)とし、必要性を訴えた。

 株主提案はいずれも「脱原発へ!中電株主行動の会」が提出。再生可能エネルギーの導入拡大や送電部門の別会社化なども求めた。(和田木健史)

上関埋め立て免許延長 「政策踏まえ判断」 中電社長

 中国電力の苅田知英社長は27日、上関原子力発電所(山口県上関町)の建設計画で、10月に期限切れになる予定地の公有水面埋め立て免許の延長について「現時点では具体的に再申請は検討していない」と述べた。

 株主総会後に本社であった記者会見で、苅田社長は「免許の期限が近づいているのは事実だが、(夏にも見直される)国のエネルギー政策を踏まえて考える」とした。二井関成山口県知事は現状では延長を認めないとの考えを示している。

 島根原発2号機(松江市)の再稼働に必要なストレステスト(耐性評価)については「定期検査の作業は今月末でほぼ終了する見通し。早い時期に提出したい」と述べるにとどめた。

 運転開始から38年を経過した同1号機は「現状で廃炉にするという判断に立っていない」と強調。総会では、廃炉にかかる費用の見積額が380億円に上ることを示した。

 また、関西電力大飯原発(福井県おおい町)の再稼働が決まったが、「関西の需給状況は改善されるが、余裕がある状態ではない」と指摘。中国地方でも7月2日から始まる節電の取り組みは「日常生活や経済活動に影響がない形で、(2010年夏比で5%以上の)目標をクリアできるよう周知に取り組む」と述べた。(山本和明)

原発の安全や事故担当組織 新設を発表 中国電力

 中国電力は27日、原子力発電所の安全評価や事故時の対応などを一元的に担当する専門組織を新設したと発表した。原発の運営、建設両部門にあった関係部署を統合した。

 本社にある電源事業本部内に、部長をトップとする40人体制の「原子力安全技術」を設けた。情報の共有や、発電所との連携強化、重大事故に対応する要員の養成を通じ、原発の安全性を高めることを目指す。

 ほかに、販売事業本部をお客さまサービス本部に名称変更した。

中電株主総会 議決権行使書また白紙 山口県、保有と経営分離強調

 中国電力の筆頭株主の山口県振興財団(清算中)は27日、中電の株主総会を欠席し、保有する約3400万株分の議決権行使書を白紙提出した。白紙提出は2年連続で、県は「株式保有と経営参画は分けて考える」と理由を説明している。

 ただ、規定により、会社側提案にいずれも「賛成」する意思とみなされ、会社側が反対した、原子力発電の停止・廃炉や建設中止など株主提案の議案には「反対」する立場となる。この日の株主総会では、会社提案の3議案はいずれも可決、会社が否決を求めた株主提案の5議案はいずれも否決された。

 同財団は解散前の2月、保有株の3割強に当たる1550万株を売却。保有株は3400万4957株に減ったが、議決権ベースの持ち株比率は9・4%で現在も筆頭株主を維持している。今夏をめどに清算を終える予定で、今後は保有株を引き継ぐ県が筆頭株主となる見通し。

 財団は、中電が上関原発建設予定地で公有水面埋め立て工事に着手した翌2010年から「中立的な立場を示す」として株主総会に出ていない。白紙提出について二井関成知事は「株主総会に出て積極的に意見を言うことが経営参画で、白紙は経営参画とはいわない」と強調した。

 27日は沖縄を除く全国9電力会社で株主総会があり、「物申す」自治体が目立ったが、二井知事は「それぞれの考え方や経緯があり、それに基づいて判断されること」と述べるにとどめた。

 白紙提出について、中電の苅田知英社長は株主総会後の記者会見で「株主の意見であり、山口県がご判断されたこと」と話した。(山田英和、久保田剛)

上関原発建設計画 中電本社前で70人反対訴え 祝島住民ら

 中国電力の上関原発建設計画に反対する山口県上関町の住民たち約70人が27日、広島市中区の中電本社前で座り込みをした。福島第1原発事故後も計画推進を掲げる中電の株主総会に合わせ、計画の白紙撤回を訴えた。

 建設予定地の約4キロ沖にあり、反対派が大半を占める同町祝島の住民約60人がバス2台で到着。中電本社の出入り口付近に「島民の生活を壊すな」などと書いた横断幕やのぼりを掲げた。反対派の株主から総会の報告を受けながら約2時間半、座り込みを続けた。

 株主総会は、原発建設中止や供給発電量の20%を再生可能エネルギーで賄うなど5件の株主提案をいずれも否決した。

 祝島の漁業橋本久男さん(60)は「中電を止めるため国は一刻も早く計画撤回を決めてほしい」と願っていた。

(2012年6月28日朝刊掲載)

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