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原爆症認定 現行制度改善が基本 在り方検討会中間報告

 原爆症認定制度の在り方に関する検討会は28日、東京都内で第13回会議を開き、現在の共通認識と各委員の意見を列挙した中間報告を了承した。現行制度の改善を基本に詳しい制度設計に入る方向を示したが、現行制度の廃止と新制度を求める日本被団協の主張も併記した。9月に議論を再開する。

 中間報告は「基本的な制度の在り方」「認定基準」「手当」の論点で整理。制度の在り方について「現行制度をより良くするのを基本」としつつ「原爆症認定制度は破綻しているという意見に留意」を共通認識に挙げた。必要に応じた被爆者援護法改正も明記した。

 被団協の委員がこの日の会議で、原爆症認定者の医療費を国が全額負担するのは「国家補償的配慮」があると強調。「被爆者援護には一般の福祉施策とは異なる理由がある」との記述も加えた。

 認定基準については、残留放射線の影響をめぐり現行の認定基準が「軽視している」「勘案している」の両論を併記した。手当に関して、全員に支給した上で病状に応じて段階的に加算する被団協の「被爆者手当」案も取り上げた。

 座長の神野直彦東大名誉教授は「登山に例えるなら『ベースキャンプ』。ここから後退せずに共通認識を深め、広げたい」と話した。(岡田浩平)

<中間報告の主な内容>

◎は共通認識、○は各委員の意見

■基本的な制度の在り方
◎現行制度をより良くするのを基本に議論
◎被爆者援護法10、11条に基づく原爆症認定の制度は破綻しているという意見に留意
◎被爆者援護には一般の福祉施策と異なる理由があるのに留意
◎必要に応じ被爆者援護法を改正すべき

■認定基準
◎科学的知見は重要な一方、科学には不確実な部分もあるのを前提に考える必要
○現行基準は残留放射線の影響を著しく軽視している
○残留放射線の影響は行政認定でも勘案されている

■手当
◎援護策は医療給付や手当など全体のバランスを考える必要
○被爆者全員への手当支給には国民の理解が得られない
○全員に手当を支給し病状に応じて段階加算する制度をつくるべき

【解説】 根幹の方向性で不一致

 原爆症認定制度の在り方に関する検討会が28日に了承した中間報告は、13回を重ねた会議で、被爆者援護法改正による新制度か、現行の認定制度の改善か、根幹の方向性で一致できていない現状をあらわにした。今後、具体的な制度に合意できるか不透明だ。

 日本被団協には、現行制度の延長では放射線起因性を厳しく問う認定要件が残るという危惧がある。残留放射線による健康への影響が軽視され続け、被爆者の救済にならない。だから現行制度の廃止を求め、起因性を個別に判断せずに病状などに応じて金額加算する「被爆者手当」を提案している。

 中間報告に、現行制度が「破綻しているという意見に留意」と明記された点を被団協側は一定に評価する。しかし、大半の委員は現行制度の見直しで十分との認識に立ち、各論の議論で意見が対立するのは間違いない。

 検討会では被団協の坪井直代表委員(87)=広島県被団協理事長=と田中熙巳(てるみ)事務局長(80)の2人が被爆者代表として奮闘する場面が目立つ。高齢化する被爆者に寄り添う議論を急ぎたい。(岡田浩平)

(2012年6月29日朝刊掲載)

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