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連載・特集

熱いキューバ アメ車が席巻

 ロカビリーの愛好家には垂ぜんものだろう。あのエルビス・プレスリーも乗った1950年代のアメリカ車が街中の至るところに。先ごろ取材で訪れたキューバの首都ハバナでまず驚いた光景だ。

 地球の反対側、カリブ海に浮かぶ社会主義国だ。このキューバがいま熱い。米国との54年ぶりの国交回復で、ビジネスやレジャーで成長が見込まれている。

 欧米などからの人が押し寄せている。葉巻やラム酒を買い、アメ車のタクシーに乗るのが定番コースという。

 この「動く博物館」のアメ車が、米ソ冷戦による負の産物であることに目を向けねばなるまい。核戦争の手前まで行った、1962年のキューバ危機だ。

 旧ソ連の核ミサイルを配備したキューバを米国は徹底的に封じ込める。昨年、オバマ米大統領の決断で「扉」はようやく開かれた。

 観光地はラテン系の明るさとたくましさにあふれている。一方で社会主義国ならでは光景も。小学校の壁には政治家の写真パネルが並び、商店は外国人向けの料金体系を取る。

 「アメリカナイズされる前のキューバを見ておきたい」。現地で出会った日本人観光客の言葉にうなずく。国際政治と現代史の生きた教材がここにある。(写真と文、論説委員・下久保聖司)

(2016年11月12日セレクト掲載)

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