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放影研 施設入居案浮上【解説】将来像踏まえ検討を

 広島市南区の放射線影響研究所(放影研)を中区の市総合健康センター内へ移す入居案を市がまとめ、長年の課題解決へ一歩進む可能性が出てきた。ただ、超えるべきハードルは多い。

 放影研は、米国が1947年に設けた原爆傷害調査委員会(ABCC)が前身。市は、市民に親しまれた比治山への建設を「占領下で強行された」としており、移転を「全市民的宿願」と位置づける。比治山公園を「平和の丘」として再整備する構想でも、公園南側の大部分を占める放影研の移転は欠かせない。

 ここへきて厚生労働省が現実的な「入居条件」を示したのは、日米両政府の間に移転に向けた一定の理解があるともとれる。それに答える市の入居案を「有力な候補の一つ」と見る向きも厚労省内部にある。

 とはいえ、まずは入居先にある市医師会の検査部門を別の場所に移してもらうように協力を得るのが大前提となる。移転費用の負担を懸念する日米両政府の合意も要る。

 何より、入居案では施設のスペースが今より縮小するとみられる。被爆者の健康調査と研究を担ってきた放影研の将来像を踏まえての検討が求められる。(長久豪佑)

(2016年11月23日朝刊掲載)

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