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社説・コラム

天風録 「カストロ氏のオーラ」

 世界一長い葉巻-。ギネスブックに載るキューバの老職人の挑戦は、8月に90メートルに記録が更新されたばかりだ。フィデル・カストロ氏の90歳を祝うものだったが、急な訃報に消沈していよう▲当のカストロ氏もギネス公認記録を持つ。革命を率い、指導者を退くまでの半世紀に暗殺計画が638回。大半が米中央情報局(CIA)による。葉巻への毒物注入、野球好きにつけ込んだボール爆弾など映画も顔負けの珍作戦が立てられたらしい▲いかに米国の目の上のたんこぶだったかが分かる。あるいは強運とともに危険を避ける見えない力も持っていたか。評価は分かれようが、激動の20世紀を動かした人物なのは間違いない▲たっての希望で13年前に広島入りした。核戦争寸前だったキューバ危機を踏まえ、「人類は危険のふちから逃れていない。ヒロシマに学べ」と熱弁を振るった。近くで接した本紙記者は信じ難いオーラを感じたそうだ▲キューバが核兵器禁止条約を後押しするのは、希代のリーダーの願いでもあろう。後継の弟は昔のあれこれがうそのように米国と和解を果たしたが、トランプ新政権下では再び嵐の兆しもある。カリスマなき21世紀の世界の行方は。

(2016年11月27日朝刊掲載)

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