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社説・コラム

社説 朴大統領の弾劾 一日も早い退陣決断を

 度重なる街頭デモに象徴される民意が、政治を大きく動かしたといえる。

 韓国国会は9日、朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾訴追案を可決した。朴氏はついに職務停止に追い込まれた。与野党は、来年1月の憲法裁判所の決定による朴氏の罷免、3月の大統領選を視野に選挙準備に入った。

 弾劾可決は2004年の盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領に続き2例目である。必要なのは国会議員の3分の2に当たる200人以上の賛成だが、今回は賛成234票で、当初の予想を大きく上回った。

 驚いたのは、弾劾に否定的だった与党セヌリ党主流派から、多数の「造反」が出たことだ。来年4月末に辞任するという朴氏の意向に基づき「秩序ある退陣」を支持していたはずだったが、次期大統領選を控え、悠長な決断を許さぬ民意の高まりを無視できなかったのだろう。

 この結果を受け、朴氏は「国家的混乱を招き、申し訳ない」と陳謝しながらも、辞任時期については言及しなかった。180日以内に罷免の可否を判断する憲法裁の審理に「淡々と対応する」というが、潔さに欠けていないか。仮に罷免されなかったとしても国民の信頼が戻ってくるとは考えられない。

 親友の崔順実(チェ・スンシル)被告による国政介入疑惑がもたらした国民の怒りや政治への不信感を、朴氏は真剣に受け止めるべきだ。いまだに続く縁故主義や、財閥と癒着する政治への疑問が人々に渦巻いている。強大な権限を持つ大統領の不在がもたらす代償も大きい。朴氏は一日も早く退陣を決断すべきである。

 即時辞任を求める声はいまだ収まりそうにない。きのうもソウル中心部で大規模なデモがあった。韓国の国民にはこれまでもデモを通じて成功体験を重ねてきた歴史があるが、今回の弾劾訴追劇を通じ、民意で政治を変えられるという自信や期待がさらに育ったに違いない。

 民主化から来年で30年。疑惑が発覚した10月下旬以降、軍事政権時代のような暴力的な鎮圧もなく、整然とデモが続く。司法まで世論に流されているようで気掛かりな面はあるにせよ、その姿は民主化の成熟ぶりを映しだす。政治に諦めムードが漂う日本とは対照的であり、学ぶところも多い。

 ただ心配なのは隣国の政治的混乱が及ぼす日本外交への影響だろう。今月、東京で開く予定だった日中韓首脳会談は先送りせざるを得なくなった。日本政府は来年早期の開催を探るがいつになるか見通せない。核実験やミサイル発射を繰り返す北朝鮮に備えるため緊密な連携が必要な時期に、残念でならない。

 さらに次期政権が国民の反発の強い朴氏の政策を継承しなければ、改善が進んできた日韓関係は再び揺らぎかねない。

 昨年末の日韓合意に基づき、元従軍慰安婦への現金支給は順調に進んでいる一方、トップが交代すれば、韓国国内に異論が多いソウルの日本大使館前の少女像の撤去はこのまま進まない可能性もある。韓国が北朝鮮への対抗措置として進める米軍の最新鋭迎撃システム「高高度防衛ミサイル(THAAD)」の配備など、日米韓の連携強化策の変更も考えられよう。

 日本政府は政権交代の動きを見定め、協調関係を継続できるよう手を尽くしてもらいたい。

(2016年12月11日朝刊掲載)

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