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社説・コラム

天風録 「ノーコン」

 広島東洋カープ時代の川口和久投手は荒れ球が武器だった。抜群のコントロールを誇る北別府学投手が死球を出すと相手が色をなすのに「ノーコンの僕は怒られなかった」。スポーツ紙で先日そう語っていた▲大目に見てもらったということだろう。もしや米軍に「オスプレイは御すのが難しく、あれしきなら想定内」と目をつぶる雰囲気でもあるのだろうか。沖縄での重大事故から1週間もたたないうちに、飛行を再開した▲浅瀬には機体の残骸がまだ散らばっている。事故原因の検証はこれからだろう。徹底究明を求めると約束しておきながら、沖縄防衛局長は米軍の再開決定を右から左へと地元に伝えただけ。米軍の言いなり、なすがままの「アンダーコントロール」でないか▲事故直後から沖縄の米軍トップは「感謝されるべきだ」発言など、上から目線も目に余る。今度は、問答無用と言わんばかりの飛行再開で、「まるで植民地支配」と反発に拍車を掛けた▲北別府さんの制球の神髄を、バッテリーを組んだ達川光男さんがブログに書いている。「心のコントロールも抜群だった」。米軍も自制心を磨かずして、沖縄県民の胸中のストライクゾーンは見えまい。

(2016年12月20日朝刊掲載)

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