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[あしたを紡ぐ] 異文化理解へ舞踊公演 広島 4ヵ国の講師 グループ結成

 アフリカ・ガーナの民族楽器のドラムが奏でる激しいビートが、薄暗い会場に響き渡る。海の恵みに対する漁師の感謝を表現するガーナ伝統の「ジラ舞踊」。全身を使った力強い舞にコミカルな動きも交え、客席から自然と手拍子が起こった。

 広島市で活動するアジアやアフリカ4カ国の舞踊講師でつくる国際舞踊グループ「PEACE(ピース)」が南区で11月中旬に開いた初公演。ガーナ、インド、韓国、日本を船で巡り、寄港先で各国の舞踊や文化に出合うという筋書きの舞台を約150人が楽しんだ。

 グループ結成を呼び掛けたのは、ガーナ出身で、同国立舞踊団の団員だったラッキーコフィ・アベメヒアンさん(40)=南区。「国際平和都市の広島で芸能を通じて、互いの国の歴史や文化への理解を深めたい」と、ことしのひろしまフラワーフェスティバルで知り合った他国の民族舞踊の踊り手を誘った。

 母国を中心に17年間活動する中で、紛争が頻発するアフリカ諸国を見てきた。「争いがもたらすものは不幸の連鎖」との思いに実感がこもる。

 2014年に来日。広島市内のダンス教室で講師を務めながら、約20人が参加するグループの活動にも力を入れる。メンバーで、インドのダンス講師を務める会社員の加藤有理さん(35)=西区=は「多国籍のメンバーと公演を実現できたのは財産になる」と今後の活動を見据える。

 在日韓国人3世で、韓国の「僧舞」を踊った舞踊家の朴美咲希さん(41)=広島県府中町=は「外国人への差別を扇動するヘイトスピーチ(憎悪表現)が社会問題になっている。こんな時こそ、民間交流を大切にしたい」と力を込める。

 肌の色や文化は異なっても、違いを受け止め、互いを理解し尊重する社会へ―。さらに多様な踊りや文化に広げ、「同じ志を持つ仲間を増やしたい」とアベメヒアンさんたちは踊り続ける。(栾暁雨)

(2016年12月21日朝刊掲載)

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