×

ニュース

中国地方2016回顧 カープの活気 公演・放送にも

 広島東洋カープの25年ぶりのリーグ制覇に、音楽や放送界も活気づいた一年だった。広島交響楽団は、秋山和慶音楽監督のファイナルシーズンに充実した活動を展開。地元ゆかりの映画も奮闘し、スクリーンをにぎわせた。(余村泰樹)

音楽

 広響は世界的な音楽家と重ねた交流が花開いた。昨夏共演したピアニストのマルタ・アルゲリッチから招待され、5月の「別府アルゲリッチ音楽祭」(大分県別府市)に出演。メイン公演で平和の音色を奏でた。

 4月には、ウィーン・フィルのコンサートマスター、フォルクハルト・シュトイデがミュージック・パートナーに就任。12月には、来年度からクリスティアン・アルミンクを首席客演指揮者に迎えることも発表された。約20年にわたって広響を導いた秋山から、年度明けに下野竜也音楽総監督にバトンタッチするのを前に、強力な布陣が整った。

 カープの盛り上がりは音楽界にも及んだ。奥田民生やポルノグラフィティ、堂珍嘉邦らカープファンの地元出身ミュージシャンは11月、優勝を祝うライブ「VIVA!真赤激!」を開催。幅広い世代で真っ赤に染まる客席を熱狂させた。リーグ制覇目前の広響9月定期演奏会では、秋山がアンコールで「それ行けカープ」を指揮。手拍子と合唱で会場が一体となった。

 広島市出身の作曲家細川俊夫が音楽監督を務める演奏会「HIROSHIMA HAPPY NEW EAR」は20回を超え、地方で現代音楽を楽しむ貴重な場として定着した。

映画・テレビ

 異例のヒットを見せるアニメーション「この世界の片隅に」をはじめ、地元関連の映画が豊作だった。「聖の青春」「モヒカン故郷に帰る」など中国地方の人物や風景を映し出す劇映画が目立つ一方、ドキュメンタリー映画も存在感を発揮した。

 岩国市の山奥で暮らす老夫婦を25年にわたって追った山口放送の「ふたりの桃源郷」は文化庁映画賞の文化記録映画優秀賞を受賞。各地の上映も盛況で、地域に根差すテレビ局の実力を示した。広島テレビは、学徒動員中に被爆死した生徒の最期をたどる「いしぶみ」を劇場公開した。

 呉市出身の森達也は15年ぶりの単独監督作「FAKE」でゴーストライター騒動の佐村河内守に肉薄。「観察」映画で知られる想田和弘は「牡蠣(かき)工場」で瀬戸内市牛窓から経済のグローバル化を捉えるなど、実力派監督の力作が相次ぎ封切られた。

 オバマ米大統領の広島訪問に際し、被爆地のテレビ局は長年の蓄積を生かして多角的に報道。カープ戦の中継では、高い視聴率をたたき出した。

 ミニシアターブームの一翼を担った映画館「シネツイン」(広島市中区)は10月末で27年の歴史に幕を閉じ、熱心なファンが惜しんだ。

舞台

 日中韓の演劇人が集う「BeSeTo演劇祭」は9、10月、鳥取市の劇団「鳥の劇場」が中心となり、同市などで開催。各国のトップレベルの作品や3カ国の演劇人が共同製作した意欲作を届け、演劇の可能性を地方から発信した。

 アステールプラザ(広島市中区)が地元演劇人の育成を目的に企画する公演「演劇引力廣島」は、人気劇作家の蓬莱竜太を3年計画で迎える初年度の舞台を上演。劇団四季は「ウェストサイド物語」「コーラスライン」など上質なミュージカルで魅了した。

 蜷川幸雄の舞台「王女メディア」などで知られる広島市出身の俳優平幹二朗が10月に死去。舞台やテレビで活躍を続けるさなかの急逝に悲しみが広がった。(敬称略)

(2016年12月24日朝刊掲載)

年別アーカイブ