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社説・コラム

川島宏治のプラス1 広島市長・松井一実さん

 広島市の松井一実市長は、2017年春に2期目の折り返しを迎える。新しい年の抱負を趣味の書道で「一石三鳥」としたためた。一つの施策で三つの効果を得たい―との思いを込めたという。

 2期目の所信表明でも触れた「200万人広島都市圏構想」は、近隣23市町と連携協約を結び、研究会を設置。産業の振興を目指し具体的な企画立案に動き始めた。

 サッカー場の建設問題は曲折を経て、市と広島県、広島商工会議所、サンフレッチェ広島の4者があらためて協議のテーブルに着き、中区の中央公園自由・芝生広場を候補地に加えて検討を進める。

 米大統領は広島市を訪れたオバマ氏からトランプ氏に交代。伝えられる言動に「悩ましい」と不安を示しながらも、被爆地として核兵器廃絶をこれまで以上に訴えることが重要と語る。

 <200万人広島広域都市圏構想>広島、山口両県の24市町が連携し、エリア全体の経済成長や住民サービス向上を図り、200万人規模の圏域人口維持を目指す。基盤産業の部品調達▽農水産物などの地産地消▽バイオマスエネルギーの地産地消▽観光客の周遊―の4分野で事業を展開する。

「200万人広域都市圏」取り組み加速

  ―2017年の課題を聞かせてください。
 2期目の残り2年となる。200万人広域都市圏構想の取り組みを加速する。広島市を含めて24市町が連携協約を結び、研究会を立ち上げた。例えば、学校卒業後に地元で就職したいと思えるよう有給の長期インターンシップを始めた。対象地域や学校群を広げ、企業誘致を市町の競争にせずに圏域で生産高、雇用にプラスになるよう促し、ともに費用負担する―といったチャレンジが考えられる。

  ―圏域を広げ、循環することは大事です。
 理念ではできるが、予算編成に当たって、各議会が自分たちの領域は広いんだと考え方を転換できるかどうか。成功事例が一つ、二つできたら、ルールを変えてもいいと思っていただけるだろう。

  ―市政推進の3本柱の一つは「活力とにぎわい」です。サンフレッチェ広島のサッカー場はどうなりますか。
 広島県、市、広島商工会議所、サンフレの4者が膝詰めで話せる状況ができた。サッカー場を造る経済効果、人々が地域を愛する効果は、(広島東洋)カープを見ても分かるように間違いなくある。施設の完成により新たな経済循環を生むには、みなと公園(南区)が優位と思っていたが、近隣の理解が得られず、スタートに戻して中央公園(中区)を再度考えようとなった。隣接する基町地区の方々が抱かれる騒音や渋滞への心配が解決可能か、対応策を取ることで利便性がどう上がるのか、検討を進めている。

  ―県、市、どちらがリードしますか。
 中央部のまちづくり全体を考える中で、費用負担も含めてマツダスタジアムの前例があることから、おのずと解決するのではないか。準備に時間はかかっても、コンセンサスを得れば、確実にスピーディーに進むはずだ。

  ―二つ目の「ワーク・ライフ・バランス」は?
 職業、家庭、地域活動の三つの分野を、生涯通じてバランス取って生活できるよう進めたい。18年度から国民健康保険が県単位で運用される。保険料、給付のあり方をバランスよく組み替える。介護を支える看護師、介護士や、待機児童解消へ向け保育士の処遇を高めるための地域独自の優遇策を実現したい。

  ―もう一つは平和の問題です。トランプ米大統領誕生で、ヒロシマの発信力はどうなるのでしょう。
 悩ましい。トランプさんは経済界出身のせいか、外交、貿易などの基本姿勢で勝ち負けを重視して、自分のテリトリーの利益を拡大したいという傾向のように見える。今までの米国は理想と理念を広げる使命感を持つ国であり、そこへ向けて、被爆体験を基に、恒久平和や核兵器廃絶を訴えてきた。トランプさんには今まで以上にぶつけなければならない。広島に来てもらえれば、世界観が変わるんじゃないか。7100都市以上が加盟する平和首長会議には、米国内の都市もある。自国のリーダーにヒロシマの思いを伝え続けることも重要だ。

  ―余暇の過ごし方は?
 ゴルフが年に数回しかできないので、ストレス発散に大声で歌う。役人生活の最後の5年間、コーラスグループに入っていた。後は書道と、時間があれば油絵を描きたい。

  ―新年の抱負を。
 「一石三鳥」。とり年だし、一つの政策で三つの効果があるような取り組みを加速したい。

 松井さんの放送はちゅピCOMで1月1~6日まで。放送時間は原則、ふれあい・ひろしまが午前10時、午後7時、同11時半、おのみちが午前10時、午後4時、同11時半。放送時間は変更になることがあります。本紙朝刊番組欄などでご確認ください。

まつい・かずみ
 京都大法学部卒。1973年、労働省(現厚生労働省)に入り、職業安定局雇用政策課長、中央労働委員会事務局長などを歴任。2011年、広島市長に当選し、現在2期目。好きな言葉は「温故知新」。広島市東区出身、63歳。

(2016年12月31日セレクト掲載)

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