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連載・特集

緑地帯 平和を願う聖堂 青葉憲明 <1>

 広島市中区幟町の世界平和記念聖堂は、原爆犠牲者を慰霊し、世界平和を祈念するカトリックの聖堂だ。被爆者のドイツ人司祭フーゴ・ラサール(日本名は愛宮真備(えのみや・まきび))が発願し、世界各国から協力を得た。完成は1954年8月6日。築62年が過ぎ、昨秋から大掛かりな耐震工事に入った。

 内陣、身廊、側廊からなる伝統的な様式。銅板葺(ぶ)きの寄棟(よせむね)屋根に、上から見ると花弁形のドームを立ち上げ、復活の象徴としてフェニックス像を頂部に載せた。聖堂北側の鐘塔では、当時の西ドイツから贈られた「平和の鐘」が正午と午後6時に時を告げる。

 中に入ると、ドイツのアデナウワー元首相が寄贈したモザイク壁画のキリストが迎えてくれる。左右の側廊には、ポルトガルやメキシコなどの聖母巡礼地から贈られたステンドグラスのぬくもりある光。オーストリアから届いた高窓のステンドグラスから降り注ぐ光は、神々しくも柔らかい。

 聖堂内の銘も興味深い。ドイツ・デュッセルドルフ市から贈られた入り口のブロンズ製の大きな扉には「平和への門は隣人愛」。過酷な戦災に遭ったケルン市寄贈のパイプオルガンは「ケルンと広島、同じ苦しみに結ばれつつ、世界平和のために共に働き、共に祈る」。祭壇にあるラサール神父のレリーフにも「平和を祈る」と神父の言葉が刻まれている。

 聖堂は2006年、原爆資料館(広島市中区)とともに国の重要文化財に指定された。(あおば・かずあき 世界平和記念聖堂保存活用委員=広島市)

(2017年1月7日朝刊掲載)

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