×

社説・コラム

天風録 「広がる亀裂」

 その塊は福岡県ほどの広さという。南極で氷に入った亀裂が急速に拡大して、やがて分離する可能性があると分かった。巨大な氷山となって漂流するとみられる。地球温暖化の影響か。海面が上昇する恐れもある▲福岡と海峡を挟んだ隣国との間の亀裂も広がる。1年余り前の合意で繕ったはずの古傷がうずきだした。釜山の総領事館前に慰安婦少女像が設置されたため。首相は撤去を求め、きのう駐韓大使・総領事を帰国させた▲日韓関係が凍り付いて溝を深めるなら、間隙(かんげき)を突くように北朝鮮リスクが上昇しかねない。実際、米国を挑発し始めている。大陸間弾道ミサイルの実験準備が整い、「いつでも発射できる」と。日韓両国にとっても由々しき事態である▲一方、米国の次期大統領は、隣国との境に壁を築くという。物足りないのか、他国との亀裂も生み出す。中国が自国の一部とする台湾に接近し、「一つの中国」の原則に縛られぬ考えを示した。中国は当然、猛反発だ▲年明け早々、世界各地で仲たがいが深刻度を増す。あちこち犬猿の仲のよう。十二支ではいがみ合う申(さる)と戌(いぬ)の間に、酉(とり)が入ったという。国々の仲を取り持ち、亀裂を埋める方策はないものか。

(2017年1月10日朝刊掲載)

年別アーカイブ