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連載・特集

緑地帯 平和を願う聖堂 青葉憲明 <2>

 世界平和記念聖堂が国の重要文化財に指定されたのは、数々の名建築を生み出した村野藤吾さんの作品であり、歴史的な寺社仏閣と同じように建築文化遺産として評価されたからだ。

 聖堂は1955年の日本建築学会賞(作品賞)を受賞した。丹下健三さんらも受賞した建築界を代表する賞で、当時の学会誌は「聖堂が原爆の犠牲となった人達への追悼と慰霊のため、また世界の人々からの友愛と平和のしるしとして、広島に建てられた意義ある建物である」と紹介している。

 村野さんが聖堂で追求した「平和的表現」にも学会は注目した。大きな聖堂、ドイツから贈られた平和の鐘をつった高さ45メートルの鐘塔、聖堂に付属する洗礼堂など、大小、高低の建物のボリューム感を「美しい調和と照対との妙をかもし出している」と評価した。

 「鉄筋コンクリートの健康な肌をそのまま露(あら)わしているフレーム・ワークは、その全体を貫く造形上の主調であるが、日本人に親しみやすい風味を出している」と同誌にはある。そして、壁一面の灰色の煉瓦(れんが)は「全体として確かで平和な感じを出す」。宗教建築を新しい手法で造り上げるのは「極めてむずかしい課題であるが、この聖堂は新しい時代に適応する新しい手法の宗教建築として、注目される」とした。

 聖堂をご覧になる際は、当時のこうした評価を参考にすると理解が深まる。可能ならば、同じく国の重文である渡辺翁記念会館(宇部市)をはじめ、村野さんの他の作品も併せて見てほしい。(世界平和記念聖堂保存活用委員=広島市)

(2017年1月10日朝刊掲載)

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