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変わる岩国基地 艦載機移転問題 <中> 絶えぬ騒音 影響未知数 悪化懸念も

 頭上から襲われるようなごう音が会話をかき消す。鳥の群れに見えた機影は、空母艦載機の大半を占めるFA18スーパーホーネット。神奈川県大和市と綾瀬市にまたがる米海軍厚木基地周辺を飛び回る。

 岩国市の米海兵隊岩国基地に移転を予定するのは、原子力空母ロナルド・レーガンの艦載機だ。空母は艦載機とともに洋上に展開しているが、点検などのため年間約200日ほど、厚木基地から南東へ約40キロ離れた同県横須賀市の米海軍横須賀基地に入港する。艦載機は空母が港にいる間、厚木基地を拠点に飛行を繰り返し、住民にとって耐えがたい騒音を振りまく。

 艦載機が岩国に移転すれば、空母が横須賀に入港している間、岩国基地を拠点に飛行を重ねることが予想される。国土交通省は昨年11月、山陰沖と四国沖の2カ所に艦載機の訓練が可能な空域を設けた。

試験飛行に不満

 昨年5月の取材で在日米海軍司令部作戦部長のジョン・ピタ中佐は「周囲に人口が密集する厚木基地より、滑走路が海側に移設された岩国基地の方が、騒音に関わりなく安全に訓練できる」と、移転の意義を強調した。だが、岩国基地の米軍機は約120機に倍増するため飛行回数は増え、訓練空域までのルートや飛行形態によっては騒音拡大の恐れもある。移転の影響は未知数だ。

 厚木では騒音被害を巡って周辺住民が、国を相手に飛行差し止めや損害賠償を求める訴訟が繰り返されてきた。岩国でも同様の訴訟が広島高裁で係属中だ。住民の最大の関心は、厚木の騒音が岩国ではどの程度になるかという点だ。

 中国四国防衛局は昨年8月、米軍側と調整して岩国基地で艦載機の試験飛行を実施した。しかし、EA18Gグラウラー1機が10分間、離着陸や旋回をしただけで、厚木で通常実施される複数機の運用の再現ではなかった。視察した市議や住民からは、「これでは移転後の騒音状況を推測できない」との不満が漏れた。

「運用変わらず」

 岩国移転後の運用について、在日米海軍幹部は「現在の厚木とまったく同じ」とした上で、「空母に搭載されていない間は、米ネバダ州の戦闘機訓練施設やグアムで訓練するなど、日本以外に出ている時間もかなりある」と説明する。

 地元では、艦載機パイロットの技量維持に必要な陸上空母離着陸訓練(FCLP)を岩国で実施するのではないかとの懸念が根強い。国は移転に絡み、新たなFCLP施設建設の候補地として、馬毛島(鹿児島県西之表市)を購入する方針だ。米軍が現在使用している硫黄島(東京)より馬毛島の方が岩国基地などに近いためとされるが、激しい騒音を伴う訓練施設の整備の行方はなお定まっていない。(野田華奈子)

(2017年1月12日朝刊掲載)

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