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変わる岩国基地 艦載機移転問題 <下> 判断 普天間移設が大前提

 「国としっかり協議していくのが市の責務であり、今は判断の時期ではない。普天間移設の見通しが立たないうちに艦載機の移転を切り離して進めることは認められない」。昨年12月20日、岩国市の福田良彦市長は、あらためて米空母艦載機移転のスタンスを強調した。

 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設を巡り、埋め立て承認を取り消した沖縄県の翁長雄志(おなが・たけし)知事を国が訴えた訴訟の上告審判決で、県の敗訴確定を受けての発言だった。

進む「地域振興」

 在日米軍再編計画に含まれる米海軍厚木基地(神奈川県)から米海兵隊岩国基地への艦載機移転は、沖縄の基地問題と密接にリンクしている。これまで国は再編全体の目的について「抑止力の維持と沖縄を中心とする地元負担の軽減」と説明。岩国市は、再編の根幹である普天間移設が進まないのに、岩国だけ負担を受け入れる状況は目的に沿わない、との考えを維持してきた。判決後、国は辺野古で移設工事を再開し、艦載機移転の前提とする「見通しが立つ」状況が生まれつつあるとの見方もある。

 再編に協力姿勢を示す福田市長は2008年2月の就任から間もなく、将来的な艦載機受け入れを想定し、住宅防音工事の対象区域拡大や日米地位協定の見直しなど43項目の安心安全対策と地域振興策を国に要望した。それらの実現に向け、市が「責務」とする国との協議は現在も続く。福田市長は移転受け入れについて「協議の先にある」とし、達成度合いを判断の一つの目安とする。市によると、43項目のうち8割に当たる34項目が「達成」か「進展中」だという。

事故の不安拡大

 昨年9月以降、FA18ホーネットや垂直離着陸輸送機オスプレイなど、岩国基地に関係する米軍機の国内外での事故が少なくとも4件相次ぎ、市民は基地を抱えるまちのリスクを突き付けられた。拡大する不安を踏まえ、同12月に村岡嗣政知事とともに上京し、稲田朋美防衛相と会談した福田市長は、「国防を理解し協力している以上、目に見える形でお願いしたい」と要望の実現を強く迫った。

 政府は、在日米軍再編で基地負担が増える都道府県向けの交付金について、16年度としていた期限を3年間延ばすことを決めた。17年度予算案には前年度比1千万円増の20億1千万円が計上され、山口県に全額交付される。一方で市町村向けの再編交付金は21年度まで岩国市や周辺市町に交付されるが、それ以降の財源が確保できる見通しは立っていない。(野田華奈子)

(2017年1月13日朝刊掲載)

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