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愛宕山住民 募る不安 艦載機移転日程伝達 経済界 消費増に期待 岩国

 岩国市の米海兵隊岩国基地への空母艦載機の移転スケジュールを国が市や山口県に伝えた20日、移転受け入れの「準備行為」として米軍施設の整備が急ピッチで進む同市愛宕山地区の住民たちは、不安を募らせた。一方、基地機能の強化に反対する市民団体は反発を強めた。

 岩国基地の西約3キロにある丘陵地、愛宕山地区。艦載機移転に伴い米軍に提供される家族住宅や野球場などの運動施設が姿を現している。国の説明では早ければ7月以降、住民と隣り合う形で米軍関係者が暮らし始める。

 「犯罪に巻き込まれないか不安。米兵には来てほしくない」。同地区の牛野谷町の主婦林真由さん(27)は、自宅近くで遊ぶ長男(3)を心配そうに見詰めた。一方、同町の中村保仁さん(69)は「米軍住宅は建設されているし、来るのは仕方ない」と淡々と語った。

 経済界からは消費拡大に期待の声が上がった。岩国商工会議所の長野寿会頭は「国は受け入れに見合う措置をしてほしい。JR岩国駅前の再開発や、米軍家族が買い物をしたくなる受け皿づくりが必要だ」と話した。

 国がこの日示した騒音予測では、移転後に被害が拡大する地域もある。その一つ、市南部の由宇町神東の自動車修理販売業、弘中英司さん(61)は「今でも会話ができないほどうるさい時がある。低空飛行はやめてほしい」と訴えた。

 基地機能強化に反対する市民団体は、現実味を増す移転への警戒を強めた。愛宕山を守る市民連絡協議会の岡村寛世話人代表(73)は「国は米軍の運用の追認ばかりで、市も国から金を引き出すことしか考えていないように映る。誰が市民の安全を守るのか」と語気を強めた。

 「瀬戸内海の静かな環境を守る住民ネットワーク」の久米慶典顧問(60)は「訓練内容や犯罪防止策が明らかにされていない。県と市は、今からでも移転中止を求めるべきだ」と強調した。

(2017年1月21日朝刊掲載)

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