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2号機 見通せぬ再稼働 島根原発 全停止5年 地元 判断基準の議論進まず

 中国電力島根原発(松江市鹿島町)は27日、全ての原子炉が稼働しない「全停止」となって5年となる。中電が再稼働を目指す2号機は、新しい規制基準への適合性審査の終了時期が見通せず、停止期間は最長を更新し続ける。原子力規制委員会の審査次第では、新年度内にも再稼働の是非の判断を問われる可能性のある地元では、安全性への懸念もあり、判断基準についての議論が進んでいないのが現状だ。(秋吉正哉、山本和明、西村萌)

 「道筋が思った通りいっていないのが実情だが、一つ一つ対応していくしかない」。25日、松江市であった島根原発2号機の審査状況の自治体向け説明会で、中電島根原子力本部の長谷川千晃副本部長は述べた。説明会は約4カ月ぶり。開催のペースも2014年9回、15年7回、16年4回と年を追うごとに落ちている。

審査停滞ムード

 13年12月、規制委へ審査を申請し3年を過ぎた2号機。同じ沸騰水型の原発では、規制委が東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の審査を優先してきたこともあって、停滞ムードが漂う。審査の大きな節目の一つで、原発の耐震設計の目安となる基準地震動も固まっていない。中電が評価を25キロとした原発南の宍道断層の長さについても、規制委はいったん了承したものの、16年11月には再度、根拠を説明するよう求めた。

 こうした状況に、松江市の松浦正敬市長は今月23日の会見で「(原発)再稼働すべきものは再稼働が求められる」とした上で、「慎重にやらないといけないが、審査をスムーズにしてもらう必要がある」と注文を付けた。地元では再稼働による経済効果を期待し、早期稼働を望む声もある。

避難計画に疑問

 だが、原発事故への不安も根強い。市民団体「島根原発・エネルギー問題県民連絡会」が22日、島根県の担当者を招いて開いた意見交換会では、事故に備えた県の広域避難計画への疑問が相次いだ。同連絡会事務局を務める芦原康江・松江市議は「国の考え方では住民の健康や安全を守れない。新潟県が独自に福島第1原発事故の検証などをしているように、県も原発が本当に必要か、安全かを検討する機関を設立してほしい」と迫った。

 他の原発立地地域では、昨年8月再稼働の四国電力伊方原発3号機がある愛媛県が、原発事故時には国が責任を持って対処するとの表明が必要と求めた。

 同連絡会は昨年、県に2度にわたって公開質問状で「再稼働への同意・不同意の判断基準は何か」と尋ねた。だが、島根県の溝口善兵衛知事は「県民や県議会、原発周辺自治体の意見も聞きながら、総合的に判断する」と繰り返し回答するにとどまっている。

島根原発の全停止
 1号機は原子炉機器の点検不備問題を受け、2010年3月に運転停止。同年11月、定期検査に入った。原則、運転開始後40年で廃炉とする国のルールに従い、15年4月に廃炉となった。2号機は12年1月27日に定期検査入りし停止。ほぼ完成している3号機は、中電が国の新規制基準への適合性審査の申請を準備している。

(2017年1月27日朝刊掲載)

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