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渡辺和子さんお別れの会 二・二六事件 安田少尉の弟 長年の文通 回顧

「寛容」渡辺和子さんに学ぶ

 昨年末に89歳で亡くなったノートルダム清心学園(岡山市北区)理事長の渡辺和子さんのお別れの会が12日、市内のホテルで営まれ、渡辺さんの父で陸軍教育総監だった錠太郎氏を二・二六事件(1936年)で殺害したとされる青年将校安田優(ゆたか)少尉の弟、安田善三郎さん(91)=神奈川県葉山町=が参列した。「申し訳ない思いと、感謝の気持ちでいっぱい」と故人をしのんだ。

 安田さんは86年7月、東京であった青年将校たちの50回忌法要で渡辺さんと出会った。墓前に手を合わせる姿に、「自分が逆の立場でも同じことができるだろうか」と、涙が止まらなかったという。

 渡辺さんに手紙を送った縁で交流が始まり、自宅に招いて食事をしたり、100通以上の手紙をやりとししたり―。渡辺さんの影響で91年には洗礼を受けた。「教訓めいたことはおっしゃらず、温かいまなざしで見守ってくださった」

 昨年12月19日に渡辺さんから届いた最後の手紙には「お寒い折り、くれぐれもお大切に」と記されていた。亡くなったのはその11日後だった。

 「『父の娘で良かった』との言葉をうかがった。どんなにつらく、悲しい思いで過ごされたことか。それでも優しく接してくださり、許すことの大切さを教わった」と安田さん。体の続く限り、墓前に手を合わせ続けるつもりだ。「私にできる、せめてもの恩返しだと思うから」

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 お別れの会には、同学園が運営する大学や高校などの同窓生たち約3500人が参列。祈りをささげ、祭壇に花を手向けた。ノートルダム清心女子大の高木孝子学長は「シスターの遺志を忘れず、しっかりとした足取りで一歩一歩前進していきたい」と述べた。(加茂孝之)

(2017年2月14日朝刊掲載)

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