社説・コラム

社説 東芝の巨額損失 廃炉の責務を自覚せよ

 日本を代表する企業である東芝が窮地に追い込まれている。

 米国の原発事業で7125億円の巨額損失が生じた。その結果、昨年末時点で負債が資産を1912億円上回る債務超過に転落したことを公表した。しかも、正式な決算発表は監査法人の了承を得られず、当日になって急きょ1カ月後に延期する異例の事態になった。

 巨額損失の原因となった子会社の米原子力大手、ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)にからみ、経営者の不正を指摘する内部通報があり、新たな調査が必要になったためだ。

 企業の存立を揺るがすほどの損失を直前まで把握できなかった経営責任は重い。企業統治や危機管理のずさんさを指摘されても仕方あるまい。

 東芝は2年前、不正会計問題が発覚し、経営が悪化。歴代の3社長が引責辞任に追い込まれた。出直しを図るため、グループを挙げて管理体制の改善に取り組んでいた途上だった。

 さらなる信用の失墜は避けられず、再建への道のりは一層険しくなったのは間違いない。

 巨額損失を生むことになった米国での原発事業は2006年に約6千億円を投じ、WH社を買収してから本格化する。

 東芝は大別して二つのタイプがある原子炉のうち「沸騰水型軽水炉」を手掛けてきた。主流の「加圧水型軽水炉」を開発したWH社を子会社化することで世界各国から原発を受注できる態勢を整える狙いだった。

 ところが5年後の11年に起きた福島第1原発事故で、事業を取り巻く環境が一変した。安全規制の強化などで工期が遅れ、建設コストが膨れ上がり、手に負えない状況に追い込まれていったのだろう。

 本質的にいえば、震災後も甘い見通しの下、原発ビジネスの拡大路線を突き進んだ判断が裏目に出た結果である。

 さらに深刻化する事態の把握に手間取り、対応が後手に回った点も見逃せない。WH社の動きをしっかり掌握、制御できていなかったのは明らかだ。WH社との関係を含めて損失が拡大した原因を徹底的に洗い出すことが出発点になろう。

 東芝は損失を穴埋めするために、収益の柱である半導体事業を子会社化し、株の半分以上を売却することも検討している。

 ただ、稼ぎ頭の事業を切り離した後の将来展望が不透明だ。財務体質の改善は一時しのぎになりかねない懸念が拭えない。

 東芝は、リスクの高い原発の新設工事から撤退し、原子炉などの設備や機器の納入と保守に軸足を移す方針だ。事業の縮小はやむを得ないとしても、既存原発の安全確保や廃炉などを担っていく役割は求められる。

 東芝は福島の原発建設に携わり、事故後も汚染水対策などに関わる。さらに今後、本格化する溶けた核燃料(燃料デブリ)の取り出しでも中核を担う。

 もとより極めて困難とされる過酷な環境下での作業には技術的な課題も多い。きのうも東芝が開発と運用に携わる東京電力の調査用ロボットが、目標の原子炉直下まで到達できなかったことが明らかになった。

 廃炉作業を支える技術力と人材の確保は原発メーカーとしての責務のはずだ。その自覚を持って、経営再建の道を探ってもらわねばならない。

(2017年2月17日朝刊掲載)
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