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[変わる岩国基地] F35配備1ヵ月 高まる軍事的拠点性 市民ら低空飛行懸念

 米軍の最新鋭ステルス戦闘機F35Bが、岩国市の米海兵隊岩国基地に配備されて18日で1カ月。年内に配備予定の16機中、1月下旬までに10機が到着した。8月に残る6機が配備され、7月以降は米海軍厚木基地(神奈川県)から空母艦載機61機の移転も始まる。アジア太平洋地域を重視する米軍の戦略の中で、岩国基地の軍事的拠点性は高まるばかりだ。(藤田智)

 14日、約1時間の飛行を終えたF35Bは、基地滑走路北側の垂直離着陸用パッドに低音をうならせながら降り立った。滑走路を見渡せる今津川沿いの市道では連日、航空ファンたちがカメラを向ける。

 岩国市が基地北側の同市川口町に設置する騒音測定器はこの日、計4機の離陸時間に近い午後3時52分と同4時1分にそれぞれ84・1デシベル、89・2デシベルを観測。90デシベルは地下鉄車内に相当するとされる。うち3機の着陸間際の同5時7分と27分は約71デシベル。米軍は同機の騒音について、FA18ホーネット戦闘攻撃機と比べ、離陸時に約2デシベル大きく、着陸時は約11デシベル小さいとする。同日に市基地政策課への騒音に関する苦情はなかった。

 16機の配備完了で約460人の隊員や家族が岩国へ移る一方、現行のFA18部隊(12機)とAV8Bハリアー攻撃機部隊(8機)とともに約330人が国外に移り、基地関係人口は約130人増えるという。艦載機移転後はさらに約3800人の増加が見込まれる。

 F35Bは1月30日に岩国で訓練に入り、2月初旬に沖縄での訓練も始まった。在日米海兵隊を統率する第3海兵遠征軍(司令部・沖縄)は「今後も嘉手納基地や伊江島補助飛行場などを拠点に、周辺空域で訓練を実施する」としている。今秋には米海軍が強襲揚陸艦「ワスプ」を米海軍佐世保基地(長崎県)に配備予定で、短い距離で離陸可能で垂直着陸もできる艦載機として運用する見通しだ。

 軍備拡大の傾向が目立つ中国、事実上の弾道ミサイルや核開発を進める北朝鮮を念頭に「抑止力」を高めたいとする米国の戦略は、着々と具体化している。

 岩国基地では今月、7月以降とされる空母艦載機移転を前に、最新鋭のレーダーを備えた米海軍のE2D早期警戒機5機による「配備前訓練」も始まった。地元には事実上の先行配備との批判もある。

 米軍機は中国山地の一部を訓練空域としているため、広島県や島根県などの自治体や市民は低空飛行や事故を懸念する。「岩国基地の拡張・強化に反対する広島県西部住民の会」の坂本千尋事務局長は「低空飛行が増え、国の説明とは違う騒音被害が起きる可能性がある」と指摘する。

(2017年2月18日朝刊掲載)

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