×

ニュース

憲法は国民守る「檻」 入門書執筆の楾弁護士 広島・高陽東高で講演 

 憲法の入門書「檻(おり)の中のライオン」を執筆した広島弁護士会の楾(はんどう)大樹弁護士(41)が1月下旬、広島市安佐北区の高陽東高で講演した。憲法を檻に例え、その役割を易しく解説。さて檻の中にいるライオンとは、いったい誰のことなのか。(奥田美奈子)

 「憲法を守らなければならないのは誰だろう。国民みんなか、それ以外か」。楾弁護士の問い掛けに、生徒約710人のほとんどが国民と答えた。では、憲法にはどう書かれているのか。条文を探すと―。

 第99条 天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 「国民とは書いてないね。憲法という檻で動きを制限されているライオンとは政治家や公務員、つまり国家権力だ」と楾弁護士。そして、なぜライオンが登場することになるのか解説を始めた。

 国民は人間らしく、個性を尊重されて生きる権利がある。ただ個性も意見も違う中、互いを尊重し、秩序を保って暮らすにはルールが欠かせない。「だから強い力を持つ誰かに、みんなをまとめてもらう必要がある。それがライオンだ」

 でも、強いライオンが暴れたら怖い。権力を振りかざし、国民を傷つけたり、戦争を始めたりするかもしれない。「そこで、国民が身を守るために作ったのが檻であり、決まりである憲法だ」と、著書に沿って説明した。

 楾弁護士は教科書で習う用語も、檻を使って言い換えてみせた。立憲主義とは、ライオンに檻の中で政治をしてもらうこと。国民主権とは、檻を作ったり修理したりするのは国民だということ。民主主義や参政権とは、どのライオンを檻に入れるか選ぶのは私たち国民だということ…。「普段は意識しないが、私たちは憲法で守られている。その役割をあらためて学ぼう」と締めくくった。

 講演を振り返り、3年山田菜摘さん(18)は「ライオンが檻から出ないよう見張るのは、私たち自身だと気付かされた」。選挙権年齢が18歳以上に引き下げられ、昨年7月の参院選で戸惑いながらも1票を投じた意義をかみしめた。

 「憲法改正に関わるニュースが目立つようになり、気になるテーマだった」と3年目春宏哉さん(18)。「難しいと感じていた仕組みを、すっきりイメージできるようになった。憲法改正について自分なりに考えてみたい」と話していた。

(2017年2月19日朝刊掲載)

年別アーカイブ